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ネイキッドと比べて、スーパースポーツのシートはなぜあんなに薄いのですか?【教えてネモケン058】

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A.独特のカタチは、コーナリングを最優先した結果

昔ながらのネイキッドのシートは厚みもあり、形状もフラットですが、スーパースポーツは特殊な形状をしています。
前方は狭いのに後方は広がっていて、しかもかなり薄い形状です。
スポーツ走行に優位な形状なのでしょうが、どんなメリットがあるか教えてください。

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スーパースポーツは、運動性を重視するため総じてシートが高い。前部が細くなっているのは足着き性の向上と下半身でしっかりとマシンをホールドするため。後部が広いのは腰を後ろに引いて、大きくオフセットしやすいようにするため。形状にしっかりと曲がるための約割があるのだ

シートに求めるのは、快適性? スポーツ性? それともデザイン?

確かにスーパースポーツのシートは、クッション部分が薄くて快適そうには見えません。ただシートの厚みだけで、快適性をはかるのはちょっと違います。本格的な長距離を意識したツーリングバイクは、意外に厚くありません。長時間走ることを考慮していることはもちろん、高速道路やワインディングなど様々なシチュエーションで疲れない工夫が凝らされているからです。むしろ2本サスの昔ながらのネイキッドなどは、いかにもオートバイらしいデザインを意識したカタチとして、シンプルで厚みのあるパッセンジャー部分まで繋がった形状となっています。

それはともかく、スーパースポーツのシート形状のナゼ? を解説していきましょう。

スーパースポーツのシートはコーナリング用

まずスーパースポーツのシートを上から見てみましょう。前が細く絞られて後ろが左右に幅広い三角形になっていますよネ。前が絞られているのはひとつに停車時の足着き性が考慮されています。

スーパースポーツ系がどれもシートが高く設定されているのは、コーナリングで加速するとき、ライダーの体重が後輪のトラクションに効率が良く体感しやすい位置関係を優先しているからです。なので、細身の車体を生かし、足着き性を良くするためにシート前方を狭くしています。

ではシート後部が幅広いのは? というと、コーナーで腰を左右にズラす体勢を前提にしているからです。MotoGPなどでは、下半身がぶら下がっているようにみえるほど腰をズラしますが、まさにこの体勢にフィットさせる形状というワケです。

しかも左右にズラすとき、腰が弧を描くような円運動をするのですが、腰がシートの表面を滑っていく動きをしやすい配慮も含まれています。そしてカーブに対しアウト側になるお尻の片側だけが、横に拡がったシートのイン側の縁でグリップしやすいよう膨らみが感じられるはずです。

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スーパースポーツのシートは、腰をズラしたスポーツライディング用のカタチ。こぶしひとつ分腰をズラすだけでもその効果を感じられるため、腰をズラしたことがないスーパースポーツユーザーはやってみよう

動きやすく、ホールド性の高いスーパースポーツのシート

さらに良く見ると、シートの後方が微妙にせり上がっているのがわかりますよネ。これは腰の片側のグリップに加え、加速した状態で体重をしっかり受けとめ、後輪へ逃さず荷重を伝える大事な位置関係でもあるのです。

前が若干低くてシート表面も滑りやすいことから、ツーリングで高速道路を走っているときや、スロットルを戻して減速気味なとき、それにもちろんブレーキングをした際に、腰が前方に滑ってしまう落ち着かない状態は誰でも嫌だと思います。そんなときはステップを足で前方向に蹴るようにしたり、コーナー手前であれば腰をあらかじめズラし気味にしておくと、ストンと前まで滑ってしまう状態を防げます。

じつはスーパースポーツのライディングポジションは、このシート形状だけでなく燃料タンク形状も密接に関係していて、ニーグリップの凹みが逆3次面形状をしていたり、タンク前方のいちばん幅が広い部分の上縁形状も、アウト側になる腕の肘の部分が絶妙に触れてホールド感を高める配慮がされたカタチなのです。

というように、スーパースポーツはコーナリングするときの体勢がすべてに優先されているといって過言ではありません。まさにスポーツをする道具然としているワケで、設計時の狙いを良く理解してライディングしてこそ本領が発揮されるというものです。

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クラシックなバイクはタンデムも考慮。そのためフラットな形状を採用していることが多い。ロイヤルエンフィールドのシートは一見クラシックだが、乗り心地もしっかり追求

Words:根本 健 Photos:真弓悟史