A.スポーツ性を追求すると1本ショックに!
リヤサスのショックユニットが1本のものと2本のバイクがありますよね。
昔ながらのネイキッドが2本、スポーツバイクには1本のことが多いようですが、
そもそもどんな違いがあるのでしょう?
ルックスを重視した2本ショック
昔ながらのネイキッド系のバイクの多くがいまも2本ショックユニット仕様ですが、これはオートバイらしい伝統的なルックスを重視しているからと言い切って良いと思います。
もちろん、だからといって機能を重視していないわけではありません。サスペンションのショックユニット単体の構造や取り付け角度に工夫を凝らすことなど、相応に進化を遂げているのです。
一方のハイパフォーマンスを売りにしたスポーツバイクは、ネイキッドタイプを含め、1本のショックユニットがエンジン後ろのスイングアームの付け根付近に配置されています。
その理由は、大きくいって2つあります。
ひとつは重量物をできるだけバイクの重心に近づける……マスの集中化のため。コーナリングなど、エンジン性能とともに操縦を楽しむスポーツバイクには、車体を傾けたりする際の運動性を高める必要があります。
それには軽量化がもっとも効果的なのですが、さらに重要なのが、重くて重心の役目を果たすエンジン近くに、大きくて重いパーツを配置する、質量や重量の集中化があるのです。
ブレーキングでノーズダイブする動きも、車体の中心から離れたところに大きくて重いパーツがあれば、そのネガティブな動きをさらに大きくしてしまいます。旋回時の様々な運動にしても、重心から遠くに大きく重いパーツがあれば動きを妨げてしまいます。
昔ながらのネイキッドの多くに採用される2本ショック
伝統的なルックスを重視するネイキッドには、2本ショック仕様が採用されることが多い。高性能なショックユニットを採用するなど、スポーツ性を追求したモデルも存在する
というわけで、エンジンの後ろ側にサスペンションのショックユニットを配置するのが理想的なのですが、上下動するスイングアームとこのショックユニットをつなぐ“リンク”と呼ばれる仕組みが必要です。
このリンクを介するという部分に、2つ目の重要な要因が含まれています。
サスペンションは長くストロークしたほうが、路面からの細かな振動など小さな荷重変動や、大きな段差など乗り越えたときの衝撃まで幅広く対応できます。
しかしスーパースポーツにとって、車体の運動性は生命線です。長いサスペンションのストロークはそれだけ車体にムダなピッチングモーションを誘発し、落ち着くまで時間がかかってしまいます。
つまり短いストロークで、長いストロークと同じような幅広い荷重対応をするための仕組みが、このリンクを介した1本ショック仕様なのです。
このリンクを介する構造は、いくつかの直線とお互いを結ぶ軸受けで構成されています。その動きを辿ってみるとわかるのですが、後輪の上下動に従ってリンクの直線部分はお互いの角度を変えます。
この角度が90度に近いほど伝達する動きが速くなります。いわば円運動でショックユニットを結ぶことによって、短いストロークでも深く沈むと長いストローク並みに大きな荷重に対応できるというわけです。
専門的には二次曲線的な荷重対応、奥へストロークするほどバネ特性が強まるプログレッシブ特性のサスペンションとも呼ばれています。
この特性を活かして、複雑なリンクを介する機種もありますし、シンプルなそれほどプログレッシブ特性をもたせていないバイクもあります。ただいずれにしても2本ショックの4~8倍の荷重をうけるサスペンションユニットなので、構造的にも複雑ですし、エンジン後部からの熱にも晒されています。
外からは見えにくいこともあって、ダンパーのオイルシールから油が滲んでいるなど見過ごしがちです。コーナリング大好きのオーナーであれば、すべての根幹でもある後輪グリップを支える1本ショックのチェックは、欠かしてはならない部分といえるでしょう。
スポーツ性の高いバイクに採用されるモノサス
リヤサスの1本ショック仕様は、質量や重量のあるパーツをエンジン付近に集中させるのと同時に、リヤショックユニットにリンクを介することで、初期の動きでは柔らかく、ストロークが深いときには固くなるプログレッシブ特性を得るなど、スポーツ性を重視したモデルに採用されるケースが多い