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昔より現在のエンジンは無個性になったのですか?【教えてネモケン033】

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A.“最新”のほうが際立つ個性を感じるはず!

久しぶりにバイクに乗ろうと思い、いろいろ勉強中です。
バイク関連の情報を調べていて気になっているのが、
エンジン形式や気筒数が異なるバイクでも
昔ほど違いを感じない? ということです。
いまとなってはエンジンの個性などは
希薄になってしまっているのでしょうか?

気筒数の多い、少ないでは語れなくなりつつある特性の違い

お話をお聞きするかぎり、おそらく’80年代のバイクブームを過ごされた世代の方だと拝察します。そうしたリターンされた方にも、ぜひ最新バイクの醍醐味を堪能してほしいと思います。

当時のバイクではあり得なかったことが現実のこととなって現れています。きっと驚かれることばかりだと思いますが、乗りやすくなったから個性が失われて面白くない……ということは絶対にありませんからご安心ください。

エンジン形式による違いが昔ほどなくなっているのでは? というご質問ですが、かつては気筒数が少ないほど低回転域のトルクがあって、気筒数が増えると低い回転域はチカラがなく高回転域の伸びが魅力だと言われてきました。ところが現在は、こうした特性が際立つ違いではなくなりつつあるのです。

それは今や単に絶対性能を追求することより、乗って楽しい、もしくはコーナーで曲がれるトラクションを得られるよう、自ずと低い回転域から中速域まで発生するトルクが豊かになり、スロットルレスポンスもより扱いやすく進化してきたからです。
とはいっても、エンジンの気筒数による爆発回数の違いが消えることはありません。

2気筒も並列ツインでは180度や270度クランク、狭角Vツインに90度VのLツインといった、爆発間隔を均等ではなくすことで、エンジンの駆動と後輪へ伝わる脈動を際立たせ、路面を蹴る感覚は’70年代以前のバイクより明確に伝わるようになっています。

3気筒も、120度クランクのスムーズさとチカラが加わったときのピストン往復振動など、4気筒にはない感性で魅了されます。

そして4気筒もクランク位相をアンバランスにすることでトルク変動を生じさせ、低回転域から中速域までの路面グリップを高めたり、燃料噴射の特性を急加速のレスポンスに的を絞るなど、各メーカーも独自の特性を与えているのです。以前のように、どれも同じフィーリングになるということがなくなっているのです。

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ミドルクラスでは並列2気筒が増殖

かつては低中回転域の力強いエンジン特性が魅力といわれていた2気筒エンジン。その特性を生かし、現在も扱いやすさを追求したモデルもあれば、ドゥカティLツインのように高い回転域までよどみなく回せるモデルもある。 近年のミドルクラスにおいては、生産性が高くコンパクトになる並列2気筒で、270度を主に様々な位相クランクを採用したモデルが登場している。大排気量スポーツモデルにはVツインが採用されるケースが多い。(写真は並列2気筒、75度位相クランクを装備するKTM 890 DUKE)

'80年代とは異なる次元で進化している

まずは気になっているモデルに試乗なされることをお薦めします。ただエンジン回転を中速域以上まで回してしまうと、そこはただ絶対性能が発揮される領域です。そこでは、有り余るパワーに圧倒され思わずスロットルを戻してしまうはずです。

それにまだ慣れていないバイクで急激なダッシュを試みるのはリスクが高すぎます。まずは2,000rpmで、そして3,000rpmと、昔の感覚だと低回転すぎてピストンの頭部が振れてエンジンに良くないと言われたような回転域を使います。この回転域を使って、少なくとも1/4開度までは徐々にではなくスパッと大きく開けてみましょう。

レスポンスが穏やかで、それでも人間の感性に馴染みやすいタイムラグを介し、後輪が路面を蹴る感覚を伝えてくるはずです。ここでのエンジン形式やメーカーの違いによる差はかなりのものです。

もしかしたら気筒数の違いを超えた、フィーリングの差に驚くかもしれません。

それほど最新のバイクはどれも個性豊かに作り上げられています。開発競争でライバルに追いつき追い越そうとするため、個性を失わせつつあった’80年代とは、すでに次元の異なる進化を果たしているのです。

おそらくどのバイクを選べば良いのか迷うはずです。どれが自分に合っているか相性が良いかなど、しばらく乗られていない方であれば、なおさらを簡単に答えは出ないことでしょう。

どんな乗り方にもそつなく応えてくれる中庸をゆくバイクが、いってみればないに等しいといえるからです。

突き放すようですが、その贅沢な悩みに翻弄されてください。ボクもいまだに新しいバイクに試乗すると、その誘惑にかなり惑わされているのです。

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激しさと扱いやすさを併せ持つ並列3気筒

トライアンフやMVアグスタなどの海外メーカー、そして国内ではヤマハがMT-09で採用しているのが並列3気筒エンジン。排気量600〜900cc程度のスポーツモデルに採用されることが多く、120度クランクが生み出すトルクフルでありながら高回転域での伸びも良いという、3気筒ならではの特性が受けている。MVアグスタの3気筒エンジンは、MotoGPマシンなどと同様に逆回転クランクを採用するなどスポーツ性を強くアピールする(写真は並列3気筒を搭載するMVアグスタ SUPERVELOCE 800)

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4気筒は回して楽しむ……は過去の話

スポーツバイク用の並列4気筒は、高回転を生かしたパワー追求型として発展してきた歴史を持つ。しかし、現代のスポーツバイクに搭載される4気筒は、ライディングモードをはじめとする電子制御化が進むことによって、よりハイパワー化を実現しつつ、低回転域からでも十分なトルクを発生させ、トラクション効果を存分に発揮できる仕様へと進化している。低回転側の操作性が増したことで、公道でも楽しめる範囲が広がっている(写真は並列4気筒を搭載するBMW S1000RR)