A.2万キロ、3年ほどでのオーバーホールがオススメです
いまの愛車は5年目なのですが、サスペンションをオーバーホールするか悩んでいます。
サスペンションオーバーホールの効果は、一般のライダーでも体感できるのでしょうか?
サスペンション内のオイルは徐々に減っていく?
まずサスのオーバーホールの効果から説明しましょう。サスペンションのユニットには、伸縮する動きでフワつかないよう、これを抑えるダンパーという機能が内蔵されています。これはオイルがサスペンション内のピストンの小さな通路を通るときに発生する抵抗を利用したもの。エンジンオイルほどすぐではないにせよ、長時間で汚れたりして機能低下をきたします。5年も乗ればダンパーオイル交換が望ましいのですが、それより顕著に機能低下へ影響するオイルが減ってしまうことのほうが重要でしょう。
フロントフォークだとインナーチューブとアウター、リヤサスでもスピンドルとアウターとが伸縮を繰り返していますが、ここでダンパーオイルが漏れないようオイルシールが封入されています。しかしインナーチューブやスピンドルは、内部で直接ダンパーオイルに触れていて、伸びたときオイルシールがあってもわずかながらオイルを引き出してしまいます。
微量なので空気に長時間触れていれば乾いてしまうため、気がつくことはまずありません。
新品オイル
約30,000km使用したオイル
左が新品のオイルで右が約30,000km使用したオイル。金属同士が触れ合っている部分もたくさんあるため、距離を走ればそれなりにオイルは汚れるし、スラッジも溜まる。またリヤサスはマフラーやエンジンに近かったりすると熱を持ちやすく、オイルが劣化しやすい
もちろん飛び石などでインナーチューブやスピンドルに傷がつくと、そこがオイルシールを引っ掻き、オイル漏れが生じる場合もあります。しかし、そうでなくてもサスペンション内のオイル量は少しずつ減り、機能低下、いわゆるヤレた感じが強まります。
というワケで、オーバーホールはサス本来の機能を復活させるため、その効果は顕著で誰でも実感できます。
サスペンションのオーバーホールは、サスペンションを全バラにして、各パーツを洗浄。スライドメタルやダストシール、オイルシールなどの消耗品は新品に交換するのがセオリー。プロショップによっては超音波洗浄を実施。そのくらい洗浄は大切なのだ。写真はアクティブのファクトリー
ノーマルのリヤサスペンションはオーバーホールできない?
作業はオイルの交換と内部の清掃になりますが、これは主にフロントフォークの話で、リヤショックに関しては基本的にバラせない構造のため専門ショップに依頼するのが無難です。もしくはリヤのみリプレイス品に交換、というのも良いでしょう。ただし、最近はオーリンズ製のリヤサスをノーマルに採用しているケースもあり、こちらは当然オーバーホールが可能です。
またプロショップによっては、インナーチューブにチタンコーティングやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティングを施し、表面を滑らかにしたり飛び石による傷を防止することも可能です。サスペンションの作動と耐久性を大幅にアップさせるチューンを用意しているケースもあるので相談してみましょう。
リヤサスペンションのみリプレイス化するのもあり
リプレイスサスは、大量生産されるバイクへ標準装備されているサスとは、基本的に機能の次元がまるで異なります。いちばんの違いはダンパー構造でしょう。サスは路面の衝撃を吸収するのが目的の機能ですが、大きな荷重入力にはグッと動きにくくして耐え、小さな荷重入力は細かく動いて振動を車体へ伝えないなど、相反する要素をこなしています。
これは内部構造でダンパーオイルの通路を複雑にさせることで、大きな作動の中で減衰力が強まっていても、小さな動きを抑えないという難しい要求に応えられる工夫が満載されています。さらにすべての材質が硬度や熱膨張に強く、この剛性の高さが最初の瞬時の動きを決定的に変えています。
ですから、路面追従性と吸収性能が比較にならず、発進した瞬間の後輪が路面を蹴るレスポンスから、路面の段差などは何もないように感じさせるほどの大差があります。その違いは誰でも実感できるはずです。
さらに装着してからセッティングすることでさらなるポテンシャルを発揮します。専門知識と経験の豊かなプロショップで交換するのが、リプレイスサスの効果を活かす必須というべき条件でしょう。
サスペンションは多数のパーツで構成されている。フロントフォークは調整機構のあるビッグバイクの方が複雑なつくり。また、ノーマルよりもリプレイスサスペンションの方がコストがかかった複雑なつくりであることが多い。写真はアクティブが取り扱うハイパープロ製の2本ショック
こちらはリヤサスペンションのピストン(写真の手で触れている黒い部分)に多数のシムが積み重なっているのがわかるはず。オイルがこのシムをたわませることで減衰力を発生させるのが高価なサスの構造だ(写真はハイパープロ製)
- Words:
- 根本 健
- Photos:
- アクティブ,RIDE HI 編集部