見た目や性能的にも集合マフラーがメジャーでも、
ストレート4本への思いを募らせるマイノリティ派の存在
1997年、ホンダは4本マフラーのCB400FOURをリリース。
すでに1992年からCB400 Super Fourがデビュー、人気車種となりトップを独走中であったにもかかわらず、同じエンジンをベースに4本マフラーのトラディショナルなモデルを加えたのだ。
このベストセラーまっしぐらの機種を持っていても、敢えてマイノリティ好きが対抗モデルを開発するのが、当時のホンダ流儀だったのだ。
まるでライバルメーカーのように社内で競い合う気運
たとえば1987~1988年に、ホンダは主力スーパースポーツをV4エンジンとして実際にレースでも圧勝、市販車でも頂点の存在感を誇示していた。
しかし、直4(直列4気筒)のエンジニアたちは、黙ってそれを見てたワケではなく、負けじと新しいテクノロジーも開発、ご覧のVFR400RとCBR400RRは互いに拮抗する位置で張合っていたのだ。
そんな状況を容認するホンダだけに、5年前に満を持して投入されライバルを蹴散らす勢いだったCB400 Super Fourに対抗する、トラディショナルな4本マフラーの新機種にGOサインを出したのだろう。
その4本マフラーのエンジンは、ベースをさすがに共有していたが、キャブレターをはじめ吸気系の角度を変えるため、エンジンのシリンダー角度をやや起し、見た目にも4本のマフラーに相応しい、堂々としたシリンダーの存在を意識させていた。
さらにシリンダーには空冷のように冷却フィンが深々と刻まれた、オリジナリテイ溢れるルックスとしたり、燃料タンクからサイドカバーとは繋げず、懐かしい独立したパーツとして際立たせ、エンブレムも目立つ存在にデザインするなど、随所にこだわりをアピール。
肝心の4本マフラーも、集合タイプのほうが中速からトルキーでサウンドも静粛性で上回る性能差も何のその、音質をいかに4本が独立した耳障りとなるよう研究しながら開発したというこだわり方だった。
結局SuperFourの勢いに呑まれ、短命で弊えることに……
しかしライバル?のSuper Fourの勢いが止まらず、4本マフラーで独得の雰囲気を醸し出すCB400FOURの存在はかすむばかり。
あらかじめターゲットユーザーを前提に。3色のカラーリングでリリースしたものの、あまりに反応が鈍いため2年目にはブルーとグレーの雰囲気の違うトーンを用意した。
しかしその関心の低さは変わらず、僅か2シーズンで生産を終わらせる短命モデルとなった。
とはいえ、CB750FOURを源流とするCBの歴史には、4本マフラーが必須と考える根っからのファンがホンダの社内には存在し、1999年の東京モーターショーに750~900ccのトラディショナル空冷4気筒のCB Fourを参考出品したものの、ご存じのようにユーザーからの反応の薄さに製品とはならなかった。
トラディショナルな機種は、どのメーカーでも成功率は低く、極く稀に長寿なモデルも存在するが、感性を含め様々な要素で個人の好みに左右されやすいことも関係しているのだろう。
とはいえ、チャレンジは続けてもらいたいのがファン心理というもの。今後に期待したい、