4ストローク2気筒の3作目はスーパースポーツを狙う!
1970年、ヤマハは初の4ストロークエンジンを搭載したXS-1をリリース。
英国勢をビッグバイクの頂点と認識し、これに追いつき追い越すためトラディショナルなバーチカル(直立)ツイン650ccのジェントルな佇まいだった。
しかしヤマハは当初からビッグバイクの4スト化に予定していたのが2気筒の3機種。
その末弟として1973年にTX500がデビューした。
当時の欧米では500ccクラスというと、カッ飛びバイクのスーパースポーツというのが相場。
ヤマハもその勢いにチャレンジしようと、それまでのSOHCではなく吸気バルブと排気バルブをそれぞれ直接カムが駆動するDOHCを採用、しかも燃焼室には吸気2本と排気も2本のバルブで構成する気筒あたり4バルブ、合計で8バルブのヘッドと当時ではまだレース用で一般的ではなかった高次元な仕様を奢ったのだ。
そしてクランクは180°位相。左右のピストンが交互に往復するので、バランスが良く高回転向きの設定となっていた。
ボア73mm×ストローク59.6mmといかにも高回転型の498ccは、48PS/8,500rpmと4.5kgm/6,500rpmのツインらしい中速域を意識させるスペックだったが、そのポテンシャルは9,000rpmまでブン回して2スト・350ミドルクラスを振り切る尖ったキャラクター。
ただナナハンへ人気が集中する状況と、日本では免許制度で400ccを越えると大型免許が必要となり、500ccクラスを購入しようという層は皆無に近かった。
そうしたマーケットの状況もあって、TX500もビッグバイク的な仕様とするバリエーションがB型やIIと加えられていたが、日本国内ではほとんど姿を見ないままだった。
ただ海外ではミドルクラスの需要が盛んで、オーバー750ccが増える状況がミドルクラスの存在価値を高めはじめてきた。
そこでヤマハはTX500のデザインを、どちらかというと400ccクラスに近いフォルムへとモデルチェンジ、型式名も仕向け地での事情によってXS500やGX500とシリーズのラインナップへ組み込む販売方法へとスイッチ。
1980年のXJシリーズ4気筒が登場するまで、若い層に根強い人気があった。
それにしてもTX500は、ミドルのスポーツ性とトラディショナルの融合で、飽きのこないデザインがあったらと今なら思わせる秀逸さだ。
ただ日本国内は400ccが4気筒ブームだったりネイキッドブームと、世界とは全く異なるカルチャーが展開されてきたので、当時もXS360という似た機種は存在したが、メインストリームにはほど遠い不人気モデルだった。