ヤマハの独自性にこだわらず4気筒スーパースポーツに取り組む!
1980年、ヤマハから400ccクラスで初の4気筒となるXJ400が登場した。
ホンダCB400フォアが途絶えて久しぶりに登場した4気筒のカワサキZ400FXが、DOHCと憧れのZ1を彷彿させる仕様で圧倒的な人気を得たのに対抗しようと開発されたスーパースポーツ。
ヤマハは同じ1980年にXJ650/750系もリリースしたが、このビッグバイク・スポーツはシャフトドライブと、ヤマハの実用性にこだわるフィロソフィでスーパースポーツのカテゴリーではなかった。
しかし国内でマーケットが拡大していた400ccクラスでは、ヤマハが独自性にこだわるあまり、4スト系ではそれまで販売首位を獲得したことがなく、真っ向勝負をかけた意欲作だ。
エンジンは空冷2バルブのDOHCで、51.0mm×48.8mmの398ccは45PS/10,000rpmと3.5kgm/8,000rpmと当時ではクラス最強。
しかもXJ650/750で開発した背面ジェネレーターという、クランクシャフトに発電系を装着せずシリンダー背面で駆動する方式。
これで4気筒ながら同社のXS400系ツインとエンジン幅は変わらないスリムさを誇る。さらにこの背面ジェネレーターのシャフトはクランクからハイボチェーン駆動され、ここからクラッチへ1次減速される構造とすることで、1気筒のクランクウェブにギヤを刻む他より減速比を大きく設定でき、クラッチを小径化することで前後にもコンパクトなサイズにまとめていた。
このスリムなエンジンの搭載位置を下げ、排気系をエンジン下で束ねマフラーを後方へ跳ね上げるレイアウトとすることでバンク角を確保しながら低重心化を達成。
当初からハンドリングにこだわるヤマハらしく、ライダーが乗車すると1G'で深々と沈むサスのリバウンド・ストロークの長い設定と相俟って、直進安定性はもとよりコーナリングでも前輪の旋回に安定感を与えるセッティングで、幅広いライダーに乗りやすさを感じさせ人気に拍車をかけていた。
優れたハンドリングのみならず、0→400mを13.9sec、TOPトップスピード178km/hは群を抜いていて、結果として4ストローク系では国内マーケットでヤマハ初のトップセラーを記録、ホンダやスズキに400cc4気筒のNewモデル開発を煽る存在となったのだ。
好調をうけて4本マフラーもバリエーションモデルに加える!
ベストセラーとなったXJ400は、リリース時の3色バリエーションのカラーリングに、ヤマハ専売店のYSP仕様をはじめグラフィックもよりスポーティでポップな仕様を加えた。
さらにマーケットでの反応から、ハンドリング優先で慣性力が働きにくい2本マフラーとしていたのを、4本マフラー仕様としたXJ400Dも新発売、アメリカンタイプのXJ400スペシャルも加わった。
これを機にオリジナルのXJ400を含め、エンジンを4連の吸気通路をバイパスさせ高出力と省燃費を両立したY.I.C.S(ヤマハ・インダクション・コントロール・システム)仕様としている。
こうして400ccクラスの4気筒スポーツで着々と地盤がためを進めたヤマハだったが、刺激されたライバルから攻めたパフォーマンスをイメージさせる4気筒スーパースポーツの追撃が激しさを増し、1983年に水冷化したXJ400ZSへとバトンタッチすることとなった。