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空冷でNewモデルを開発するメーカーのフィロソフィとは?【What's New】

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延命ではなく新規で空冷エンジンを開発する

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2023年は、Royal EnfieldからHunter350と先にインドで発表になったMeteor 650と、昨秋のミラノショー EICMAで発表になったDUCATI のSCRAMBLERが日本のマーケットへ上陸する。
もちろん、これから販売がスタートするのでどれも最新ユーロ5の排気ガスをはじめ様々な規制に適合している。

一般的に規制が厳しくなるほど、空冷エンジンでは諸々をクリアできず、水冷化していかざるを得ないといわれてきた。
走行風で熱を逃がす、オートバイが誕生して以来のシンプルな構造の空冷エンジン。
それが次々に姿を消していく近年を、何とも寂しい思いで過ごしていたファンは少なくない。

ところが消え行くどころか、空冷で新規のエンジン開発をしているメーカーがある。
最古のメーカー、英国に端を発するロイヤルエンフィールと、イタリアの雄ドゥカティだ。

どちらも規制に対応したからといって、スポーツバイクとして相応しくない非力なエンジンではない。
それはどちらもエンジンの出力やトルクなどを、スペックの数値ではなく乗り手が感じられる力強さを得る手法を編み出しているからだ。

一番尖った進化を続けた財産が楽しめるレスポンスを開発できた

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EICMAで発表されたNewスクランブラーは、従来からの基本を継承しつつ様々を刷新して軽量化まで果たしていた。
スタンダードの「アイコン」と、フラットトラッカーイメージの「フルスロットル」、そしてカフェレーサーイメージの「ナイトシフト」の3モデルで構成され、空冷Lツイン(90°の前傾VツインなのでL型と呼ぶ)は88mmと大きなボアで66mmの803ccショートストローク

73ps(53.6kW)@8,250rpm、最大トルクも65.2 Nm (6.7 kgm) @ 7,000 rpmが発表されたスペック。
強制開閉バルブのデスモドローミック採用で、バルブの開閉タイミングに自由度があるのと、いまや大きなボアを活かした燃焼レスポンスを高めるエネルギッシュな瞬発力が持ち味。 それもこれもMotoGPをはじめ窮境のパワーを開発した経緯に、こうした燃焼技術の応用で進化を著しくしているのが近年のドヵティの強みだ。

とくに低中速域のレスポンスと力強さは、アイドリングのすぐ上の回転域でもスムーズに加速する激変ぶり。
気難しかったドゥカティのデスモLツインを知るライダーは、間違いなく開いた口が塞がらないはず。
穏やかさと秘めたるパンチ力が共存していて、正直いうと年配のライダーにお奨めしたくなる体力を必要としない扱いやすい軽さと、操る醍醐味の大きなハンドリングの安定感で、リファレンスモデルといえる優れた中庸ぶりだ。

伝統のフライホイールマスを利用した力強さもさらに進化!

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ロイヤルエンフィールドの新しい650ツインは、この3年ちょっとで排気ガス規制の厳しさも抜けてきたノウハウが強みといえる進化ぶり。
最新スーパーメテオ650の、800ccクラスより具体的に力強さが発揮される低回転域、そしてクルージング中でもスロットルひと捻りで、いっさいのもたつきもなく全開の中間加速へスイッチされる心地よさが格別だ。

それもこれもクランクウェブのカウンター・ウェイトの設定と、バランサーもバイブレーション対応のためというより、スロットル・レスポンスを損なわないよう回転マスを分散させながら振動も抑えるというプライオリティ。
クランク左のACジェネレーターも、この回転マスのメンバーに組み入れているのが明白なカタチをしている。
最古のメーカーが途切れることなく進化を続けてきたこの回転マスのマジックは、戦後からのメーカーには経験できない技術の根幹があるのを痛感させられる。

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78×67.8mmで648cc、34.6kW(47PS)@7,250rpmと52.3Nm@5,650rpmのスペックに表記されているパワー/トルクは、乗ると何の意味もないと思わせるほど力量感に溢れ信頼感に満ちていて頼もしい。

INT650、GT650で培ったノウハウが活かされたスーパーメテオだが、このクルーザーに対応したエンジンのノウハウが、さらに次世代INT650、GT650へフィードバックされると思うと楽しみでならない。

ロイヤルエンフィールドはスポーツバイクしか生産していないメーカーだ。
しかも空冷エンジンだけを生産している。
そこには、これから125~250~350と排気量をステップアップしてきたユーザーが、怖がることなくライフスタイルとしてスポーツバイクを安心して楽しめるフィールドを必要としているというフィロソフィーが根底にある。
だからこそ将来のユーザーに対して、空冷であり続けるほうがメリットが大きいと明確に言いきる。

懐古趣味で存続させる空冷ではなく、燃焼から回転マスまで見直すことで、スペックでは読み取れない未開拓だったポテンシャルを花咲かせる……それが最新の空冷が醸し出す魅力なのだ。