英国トラディショナルはテクノロジーとフィロソフィの両面継承!
Royal Enfieldの生産本拠地、インドでのSuper Metheor 650 の世界中のジャーナリストを集めたワールドローンチへ参加した。
昨年11月のEICMAで発表になった新しいクルーザーの650は、エンジンをご覧になればわかるようにINT650とGT650がベース。しかしシャシーは完全新設計であるのをはじめ、既に次世代的な新しさが込められていて、クルーザーといってもこれまでにない次元で高く評価できたのを先ずお伝えしておこう。
ところで今回のインド取材で最大の目的は、Royal Enfieldのバイクづくりの根源というか、技術的な根拠やフィロソフィを確かめることだった。
実は2年前、日本へ上陸したばかりのINT650とGT650に初めて試乗したとき、あまりに’50~’60年代の英国ツインを彷彿とさせる、正確な身のこなしに愕然としたからだ。それから何度も乗る機会を持てたが、一度たりも裏切られたことはなかった。
どうしてここまで高度な英国流儀が継承されているのか、確かにRoyal Enfieldは英国ブランド、生産はインドだがR&Dは英国本土にある……しかし、350とか500の’40年代に設計された単気筒をインドでの需要に対し生産していた、時間が止まっていたメーカーだった筈。
そして昨年に続く新設計のClassic350を試乗したとき、その根拠が明確なレベルの高さに、これは本モノだという思いを強くした。
ただ、なぜ、どうして英国流儀が継承され、最新テクノロジーと融合しているのか……猛然と興味が湧いていたトコロへSuper Meteorのワールドローンチ。
そしてこの謎解きは、気持ちの良いほど明快にクリアできたのだ。
温故知新と向き合い、底辺に流れるトラディショナルバイク好き、そしてインターナショナルな人材という組み合わせ
Super Meteor650開発キーマンのひとり、Adrian Sellers氏と一緒に走り語ってもらった。アメリカ出身でGT650ワンメイクレースも担当する走り好き。RIDE HI No.12でインタビュー収録している。
このインド現地でのSuper Metheor 650 ワールドローンチ期間中、Royal Enfieldの重鎮や実務のリーダーたちとコミュニケーションの機会が多く、時間が経つにつれ周囲から溶けるように様々な方向からの検証ができた。
まずRoyal Enfieldの歴史という財産だ。世界最古のメーカーは、消滅したメーカーのブランドを買って再興したのではなく、実態がそのまま継承されているという事実の重みが大きい。
’40~’50年代と培った単気筒や2気筒スポーツバイクの造形は、日本でいうところのスケッチで描くデザインではなく、技術的な要素が組み合わさりカタチとして美しく仕上げられていく必須の塊りという。
だからそこにエンジンの機械的構造がどのような理由なのか、そしてそれはどう進化していったかも学べる実態が残っているのだ。
たとえばエンジンにしても、フライホイールマスでトルク特性をどう得ていくかのノウハウとか、高回転高出力狙いで駆け登ったメーカーには想像もつかない根拠が積み重ねられている。
ハンドリングを大きく左右する重要性を学んできた、ライダーの着座位置と後輪の接地点やフロントまわりのアライメントの関係や、幅の狭い単気筒やクランク位置を低めにした2気筒ならではの正確な配置に、非舗装路が多かった時代で鍛えられ、軍用バイク需要に至るまで、当時のシビアさの実態が育んだノウハウは半端ない。
そしてRoyal Enfieldの人たちは、そもそも趣味人ならではのエンスージアストとして英国のトラディショナル流儀のバイクが大好きで詳しい。
クラシカルなルックスをデザインスケッチで描いて、そのイメージに合うよう設計していく雰囲気だけのバイクとは大違いだ。
さらにインド国内の350ccニーズの劇的な増加で成果を急激に伸ばしながら、経済発展と共に中型以上へ需要もランクアップしていくスポーツバイクのビジネス拡大で、世界中から関わりたいスタッフが集結しつつある、まさにインターナショナルな組織となっている強みも感じた。
ベースの英国とインドだけでなく、イタリアや各ヨーロッパにアメリカそして日本と、既存のメーカーを経験している多国籍な経験と感性が、トラディショナルの重みを探求し進化させようと意欲的になっているのだから最強というほかない。
INT650とGT650に感じた、次元の違いはまさにここから来ていたのだ。
Super Meteor 650の、アメリカンではないフレンドリーなツーリングバイクという新しいスタイル
Street Triple R
一般的にクルーザーと呼ばれるカテゴリーはアメリカン・スタイル、いわゆるハーレーが源流のハイウェイツアラーを意味してきた。Super Meteor 650も、フォワードステップの両足をやや前に投げ出すリラックス・ポジションなので、イメージとしては大きく違わないといえるが、ビッグバイクに身を委ね操る操作に神経を遣わない走りではなく、ライダーはあくまで運転を楽しむ前提であるところが趣を異にしている。
一番それを感じるのが、コーナリング。延々と続く直線路で安定した走りなのはもちろんだが、カーブへ差し掛ると、いわゆる手足や腰の身体を使って車体をバンクさせるのではなく、ロードスポーツと同じように体幹の重心移動でナチュラルにリーン、後輪を軸に前輪が追従する作法も前輪19インチと後輪16インチのフロントが遅れてくるバランスではない。前後輪が一緒に旋回するスポーティなハンドリングだ。
INT650やGT650と同じく、英国ハリスフレームのノウハウで低重心かつ運動性を追求した新フレームは秀逸といえる。
Royal Enfieldは、Super Meteor 650 でクルーザーの経験がないライダーを意識しているという。小型バイクから排気量の大きなバイクへステップアップするライダーに、まずは自然に扱えて走りをすぐ楽しめるハンドリングを優先しているのだ。そうしたこれから拡がるスポーツバイクで楽しむバイクライフ知ってもらうために、パワーもほどほどで手の届きやすい価格帯に設定した製品コンセプトを前提にしている。空冷であることも要素のひとつだが、誤解してならないのは電子制御など最新のテクノロジーを積極的に注ぎ込んでいて、いわゆるローテク側で進化を避けた開発ではない。この高次元な開発による乗りやすさは、Royal Enfield が狙うこれから本格的なスポーツバイクを楽しもうという新しい層に対し、将来を明るくするに違いない。スポーツバイクしか生産していないメーカーの本気度には凄みに近い迫力があった。
SPEC
- 最大トルク
- 52.3Nm/5,650rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- スチール鋼管・ダブルクレードル
- 車両重量
- 241kg
- サスペンション
- F=テレスコピック倒立
R=スイングアーム+2本ショック - タイヤサイズ
- F=100/90-19 R=150/80-16
- 全長/全幅/全高
- 2,260/890/1,155mm
- 燃料タンク容量
- 15.7L
- 価格
- 7,890ユーロ~(税込み)
日本での価格は未定