CL400をベースにシングルスポーツを構想
ホンダは1977年の第32回東京モーターショーにCL400を参考出品した。
それは'60~'70年代のスクランブラー系を、当時のレトロ気運を意識したオフロードには行かない前提の街乗りスポーツ提案だった。
エンジンは輸出モデルのみだったXR400をベースにした、RFVC(放射状に配置した4バルブ)で2本のエキゾースト、さらにはドライサンプのオフ専用が漂う本格的な単気筒で1998年に発売となった。
これを好調な売れ行きをみせていたライバルのヤマハSR400をターゲットに、ロードスポーツへと外装を整え、車名もCB400SSとして2001年から販売がスタートしたのだ。
ホンダには1985年にGB400/500という、マン島T.T.を想起させる硬派なシングル・スポーツが存在していた。
ヤマハSR400のトラディショナルな雰囲気に対し、ビンテージ・スポーツで走りも本格的だったが、それが裏目に出たのか人気は限定的なモノに終わっていた。
この同じ轍を踏むまいと、CB400SSはホンダ自身の'70年代CB350のグラフィックを踏襲。
旧すぎず適度にレトロ、そんな当時の流行りを身に纏いデビューした。
しかしそれだけではターゲットが狭すぎると、CB400フォアなど人気だったレトロスポーツのイメージもオーバーラップさせた車体色がラインナップされていた。
2001年と2002年はレトロスポーツ
ただ、このヨンフォア・イメージのカラーリングが、このバイクのキャラクターを却ってわかりにくくしていたのは否めない。
さりとてベーシックなスタンダート・シングルの略号として与えられたSSの車名が、中庸を意味しているとは解釈しにくかったのも事実。
こうしたグラフィック展開の幅広さが、ユーザーのニーズと結びつかなかった典型だろう。
最大出力は29PS/7,000rpm、最大トルク31Nm/5,500rpm。CL400譲りの趣味性の濃いオートデコンプ装備のキック始動のみで、セミダブルクレードル・フレームと、ドライサンプのコンパクトなシングルは400ccとは思えない乾燥重量139kg。扱いやすく走りも良いスポーツ性を備えていたが、そのキャラクターは特徴のある評価に繋がらないまま過ぎていった。
2003年以降はビンテージとスポーツのWアピール!
そんなCB400SSも、2003年からビギナーが敬遠する要素だったキックのみの始動から、一般的なセルフスターター方式との併用とし、車体色もシングルスポーツらしさとビンテージな両面でアピールしようと様々なグラフィックが投入された。
2005年からは、スタンダードなグラフィックと個性的でお洒落なモノトーンを展開、クラシカルな演出を抑えたラインナップへと変わっていった。
2007年からは、依然として好調なSR400を意識したのが明白な、再度ビンテージな雰囲気を漂わせたグラフィックを投入。
そして最後のモデル、スペシャルエディションでは濃いクラシカルトーンにシートも2色と豪華で、ベテラン且つ熱いハートのライダーをターゲットにした戦略を展開。
しかしここまでターゲットを拡げたグラフィック展開をした機種も珍しい。ユーザーの好みは絞り込んだイメージをアピールしないと、バイクのキャラクターが伝わらず却って支持を得にくいのを明確にしたモデルといえる。
もちろん'90年代から20年以上もCB400スーパーフォアが席巻していた背景もあって、シングルスポーツがマイノリティな位置づけだったのも大きい。
バイクとしての機能は着実な機種だっただけに、惜しまれる存在だった。