フラッグシップに艶やかさは求めない硬派なホンダの真っ直ぐさを象徴したXXブラックバード!
最高速度記録3529.56km/hの米空軍SR71。とてつもない高々度を偵察飛行する目的で開発された、知る人ぞ知るひたすらスピードを求めた機体でまたの名をスーパーブラックバード。
その名にあやかったスーパーブランクバードのCBR1100XXが誕生したのは1996年。
世界最速モデルの座を目指して開発したCBR1100XXは、新開発の1,137cc水冷DOHC16バルブ4気筒から163psのハイパーと、エアロダイナミクスに優れたカウルのボディによって300km/hを実現していた。
当時のライバルは300km/hを豪語したZZR1100、後にGSX1300RハヤブサにニンジャZX-12Rとフラッグシップが居並ぶ世界。
このストレートに世界一を目指すフラッグシップ、いわゆる頂点バイクたちのフォルムは、レーサーレプリカとは一線を画した「艶やか」さや「グラマラス」な、言葉を選ばずにいえば「なまめかしい」姿態を競っていた。
そんな世界最速の座を奪還するためのXXは、しかしフォルムはひたすら空力を求め、色っぽさのない素っ気ないルックス。
そこがホンダらしさで、そのかわりと言っては何だが技術的な内容は、エンジニアというよりホンダ4気筒を知り尽くした職人が感性のすべてを注ぎ込んだ逸品のエンジンが誇りだった。
それを象徴しているのが、2軸のバランサー。
振動の少ない4気筒に、スムーズさだけでなくダイナミックさを加味するため、敢えてふたつのバランサーを駆動しているのだ。
実際にCBR1100XXを駆ると、低い回転域からは揺さぶるような鼓動が力強く車体を押し出し、中速域からも排気干渉の共鳴サウンドと共に絞り出すトルクに突き飛ばされ、高回転域はまさにジェットフィールで加速Gから意識が朦朧としてくる「危険領域」に晒された。
ただ「速い」ではなく「凶暴」さに落ち着きを失わなければ「整然」さを伴っているのがわかる。
パフォーマンスと感覚性能に一途、派手さを好まないホンダ4気筒に精通したエンジニアが築いた牙城は変わるのか?
実は意外にもホンダはフラッグシップを優先していなかった。
スーパースポーツは「直線番長」ではなく、レーサーレプリカ時代にはまさしくレーシングマシンのパフォーマンスを至上のモノと標榜していたからだ。
それだけにCBR1100XXでも、他メーカーと較べるとシンプルなルックスでフラッグシップ感はあまり漂ってこない。
それは1987年のCBR750/1000Fのエアロデザインが、どちらかというと空力をファットなルックスとコンビネーションされた、最もフラッグシップ的なフォルムだったといえる。
その後は1993年のCBR1000Fでも、グラマラスな曲線を描くフォルムではなかった。
そして続いたXXは、ご覧のようにグラフィックもシンプルで媚びた面をまったく感じさせない真面目いっぽうなフィニッシュだ。
それがホンダと言ってしまえばそれまでだが、ライバルメーカーには依然としてフラッグシップのモデルは進化しつつ存在している。
いまホンダがフラッグシップを開発したら、どのようなコンセプトでどんな感性で魅了するのか、見てみたいと願うファンは多いと思う。