ミドルクラスに求められるライディングの充実度に応える
ビッグバイクは手にあまる、もしくは頂点モデルの高価なコストは選択肢にない、等々ヨーロッパやアメリカでは600ccクラスのニーズが多い。
そうした合理的な価値観で選ぶユーザーが中心なので、メーカーにとって製品化は容易くない。
実は当初、フラッグシップの1,000ccスーパーバイクからエンジンの排気量をスケールダウンするもののフォルムはほぼ同じモデルが多かった。
しかしコストをかけられないため、フレームをアルミからスチール製へとグレードダウンするのが基本で、相応にパワフルでコンパクトなクラスならではの、走りにうるさいライダーの評価に応えなければならない課題と取り組む必要がある。
ホンダでも1987年にCBR600Fハリケーン以来、コストパフォーマンスの良い乗って楽しめる充実度で人気のこのクラスへ、フルカウルのスーパースポーツ・カテゴリーが中心だった。
そこへネイキッドのホーネット600を送り込んだホンダに問われたのが、口煩いこのクラスを好むユーザーからの辛口評価だった。
それをコンパクトで600ccクラスの強みとして総合評価で高評価を得たのが2007年のCB600ホーネット。
現在のCB650R(同系列のフルカウルCBR650Rを含む)で搭載されているエンジンの初代が開発された。
この日本国内では販売されてこなかったPC41系から10年間の熟成が、世界で最も評価の高いミドルクラス、現在のCB650Rへと繋がっているのだ。
迷うならこれにしておけと言われる安心の高評価!
このCB650Rもそうだが、ミドルクラスでも各メーカーはフルカウルのスーパースポーツ・フォルムとネイキッドの2本立てが多い。
そうなるとネイキッドはタウンユースが中心のキャラクターを求められそうだが、欧米のミドルクラス・ライダーはネイキッドでも走りの充実度を求める。
それだけにタウンスピードでピックアップに優れ扱いやすさを進化させるのと同時に、ワインディングでのトラクション性能を向上させるテーマなど、このエンジンの熟成度はかなりの実績を積み上げる結果となっている。
当然ながらフレームや足まわりにも、コストをかけずに高いパフォーマンス・バランスを込めなければならない。
実は10年以上を経過してきた中で、マイナーチェンジでも細かく形状変更やマウント方法の模索に至るまで、目立たないものの実質的なレベルの高さは太鼓判レベルにある。
たとえば下り坂のコーナーへ進入する際に路面からの吸収・収束が、リッターバイクとの差になっていた点も、現行のCB650RではSHOWA(ショーワ)製SFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)の採用で、優れた路面追従性と軽量化を両立させている。
この充実した装備もあって、ヨーロッパやアメリカでは「とりあえずコレにしておけ」と言われるまでの信頼感を得ているのだ。
Eクラッチを装備した2024モデル!
日本では600ccクラスというと、そもそものニースの少なさから比較するモデルも多くない。
そもそも4気筒に乗りたくて、ライフスタイルでミドルクラスを選ぶなら、海外での評価のようにCB650Rなら間違いないといえる。
そしてEICMA(ミラノショー)で発表された2024年モデルには、世界初の二輪車用有段式マニュアルトランスミッションのクラッチコントロールを自動制御するHonda E-ClutchをCBR650Rと共に採用されている。
このEクラッチがこのクラスのライダーにメリットなのか否かは、実際にマーケットへ投入されてみないとわからないが、ホンダがミドルクラスをどのように考えているかを象徴しているといえるだろう。
ミドルクラスがまだまだ熟成されていくのは間違いない。