レプリカに手を出していなかったカワサキがワークスマシンZXR-7から製品化!


1988年、秋のIFMAケルンショーでカワサキのZXR750がセンセーショナルなデビューを飾った。
なぜ衝撃的だったかといえば、カワサキはスーパースポーツにレーシングマシンのフォルム、いわゆるレプリカを持たなかったからだ。
750ccクラスにはGPX750Rがありmそれ以前のNinja系でも、レーシングマシンをイメージさせるモデルはなく、サーキットと一般道路では舞台が違うと明確な一線を引いていた。
それがいきなり、ワークスマシンとして参戦していたZXR-7に市販車用の灯火類を装備した、紛う事無きレプリカで姿を姿を現したのだ。



エンジンはGPX750Rがベースで、68.0×51.5mmの748ccは107PS/10,500rpm(国内向けは77PS/9,000rpm)と7.0kgm/6,500rpmのスペック表示。
最も大きな違いは、バルブをロッカーを介した駆動方式だったのを、バケット直押しとしてヘッドカバーまわりを思いきりコンパクト化、キャブレターをダウンドラフトタイプとしてストレート吸気のレイアウトを可能にしていることだろう。
さらにクラッチをワークスマシンからのフィードバックで、バックトルクリミッター(K-BATL)を装備したのも、レース参戦を意識しているのが伝わってくる。
フレームは新開発のアルミe-BOXフレーム。メイン部分は100×32mmの内部に横リブのある日の字断面で、ダウンチューブもアルミでボルトオン、シートレールを含み16.5kgと超軽量に収まる。


雑誌広告でレーシング・スーパーウェポンを自称する勢いは、先行ライバルがひしめく鈴鹿8耐などワークスマシンZXR-7がいきなり上位へ食い込むなど、実績がそう言わせている自信めいた強気が漂っていた。
蛇腹で冷気をキャブレターへ直送するふたつのダクトも、そうした雰囲気を盛り上げていたのは間違いない。
そして世界でもレースシーンにカワサキが見られると注目を浴び、アメリカとヨーロッパでNinjaパワーへの期待が高まっていた。

そして1991年、従来比で4kgの軽量化をされた新しいフレームに、カムチェーンが右側となりボア×ストロークも71mm×47.3mmとショートストローク化、実質フルモデルチェンジといえる改良が施され、ボディカラーもライムグリーンの他にソリッドカラーも用意された。
またシングルシートでCRキャブレターやクロスレシオミッション、カウルもFRP製のZXR750Rがラインナップされた。
1993年にはカーボンサイレンサー仕様となり、後のZX-7Rをはじめ大ヒットしたZX-9Rへと進化していく道筋をつくったといえる。


このZXR750が市販を開始した1989年は、カワサキがゼファーをデビューさせた同じ年で、空前のネイキッドブームを牽引していくのだが、まさに180°方向を異にするカテゴリーのレプリカでも全力投球していたわけで、当時のカワサキの勢いが如何に凄まじかったのかが伺い知れよう。