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このバイクに注目
HONDA
VTR1000F FireStorm
1997~2007model 

VTR1000F FireStormはピボットレスとサイドラジエーターで馴染みやすく醍醐味を楽しめるスーパーツインだった! 【このバイクに注目】

Photos:
HONDA

ハーフカウルで柔和なイメージを醸しつつ追い越し加速でCBR900RRを上回った知られざるパフォーマンス!

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1996年に発表されたVTR1000F・ファイヤーストーム。
世界でビッグツインが好まれる気運が膨らみはじめ、ホンダでもそこへ対応しようということでプロジェクトがスタート。
ただホンダはメジャーな4気筒に対し、2気筒はあくまでマイナーな存在となる前提で開発をスタート、デザインもハーフカウルだったりピボットレス・フレームなど、トップエンドのパフォーマンスは狙わないコンセプトだった。

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ホンダはオフロード系の単気筒エンジンで、世界中から評価されてきたボアの大きなエンジンに強い。
90°のVツインでバランサーを持たないシンプル構造と決まると、エンジンを強度メンバーとして2気筒のスリムさを強調するため、スイングアームのピボット部分をフレームから省きクランクケースで支持するピボットレスと、マイノリティ前提のフォルムが組み上がった。
ところが得意な大径の燃焼室からV型4気筒で培ったスラント型フラットバルブのダウンドラフト・キャブレターに至るまで、さすがのノウハウでスーパーVツインと呼べるパフォーマンスを得てしまった。
例えばツインが得意な中速域で、80km/hからのダッシュを計測すると、最高速を誇ったCBR1100XXを280m先まで引き離し、CBR900RRに対しても120m先まで追い抜かれない。
98mm×66mmの996ccは、110PS/9,000rpmと9.9kgm/7,000rpm、乾燥で192kgのスペックはルックスとは裏腹にひと鞭入れると牙を剥き出しにするのだ。

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また車体のほうも、前輪荷重を高める狭角Vツインではないため、90°Vツインを少しでも補おうとラジエーターをエンジンの前から取り去り左右に振り分けてマウント、エンジン全体をギリギリに前輪へ近づけた。
さらにピボットレス・フレームのメリットで、1,430mmと短めのホイールベースにもかかわらず495.5mmとアップダウンの激しいワインディングでも安定したトラクションが得られる。
前後のサスペンションは、CBR900RRなどスーパースポーツだけに採用されていたカートリッジタイプの減衰機構も採り入れ、当時の仕様では最高レベルを纏った仕様。
さらにはエンジンの重心位置が、前輪との距離と地上からの高さでリーンなど運動性でスーパースポーツ並みに優れた過渡躅性に収まるという、乗って楽しい醍醐味あふれるハンドリングで、ヨーロッパをはじめとしてリリース後の人気は上々だった。

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対して日本国内では、見た目からツーリングスポーツ的な位置づけで、雑誌広告から緩やかに走るイメージを伝えていたことから、海外ほどの人気にはならず2003年で販売を終了した。

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実は2001年モデルで燃料タンクを2リットル容量を増やし、ハンドルの角度をやや上げてグリップ部分で16mmアップとライディングポジションを変更するモデルチェンジを経ていた。
そうしたマーケットのニーズを反映するなどして、海外向けモデルは2007年まで10年以上の生産が継続されたのだ。

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こうして優れたハンドリングに、強烈な中間加速というパフォーマンスは、日本製スーパーVツインの頂点モデルとしての実態を持ちながら、とくに際立った注目を浴びることなく過ぎてしまったのは残縁だった。
詳しい方はご存じのように、2000年にはVTR1000SP-1(RC51)というスーパーバイク・レース出場を睨んだVツイン・レプリカをリリースしたが、こちらは様々な要素が噛み合わずレースで戦績は残したものの、ファンの心を動かす要因にはならず仕舞い。
しかしVTR1000F(SC36)のツーリングからワインディングのスポーツライディングまで、乗れば醍醐味を楽しめるキャラクターは、知る人ぞ知るオーナーを虜にし続けていた。
そんなノウハウを積み上げた実績から、ホンダが開発する最新Vツインのスーパースポーツを見てみたいと期待するファンがいるに違いない。