実速300オーバーを謳い、狙った制圧状態まで貫いたカワサキ・ポリシー!

カワサキは初期の輸出先アメリカで、1969年に2ストローク3気筒500ccのマッハlllが前輪を高々と持ち上げるジャジャ馬ぶりで名を馳せて以来、最速を目指す過激イメージを看板にしていた。
しかし同時に、1972年に初のDOHC4気筒900ccのZ1では、高性能ながら高品質で頂点に相応しいハンドリングも備え、世界のリーダー然とした姿勢で信頼も勝ち得た。
その後1984年にデビューしたNinja、GPZ900Rでも開発スローガンはズバリ最速。
アメリカでの発表会ではゼロヨンと最高速を実際に披露、絶対の自信をみせ世界へ強烈なインパクトを放ったメーカーだ。
以来、GPZ1000RX、ZX-10と世界最速をアピールする路線を継承、さらにフラッグシップとして威風堂々のスタイリングを伴うカテゴリーへと自ら歩みを進め、その決定打として次モデルZX-11を新たにZZ-R1100と命名、このダブルズィーアール牙城を揺るぎないモノとしたのだ。
新たなZZ-R1100でも目標を最速としていたのはもちろん、空力を含めGTツアラーとしての総合性能で他をリードする存在を目指し、各部にカワサキらしい細やかな気配りと徹底したクオリティ追究で万全を期した開発が続き1990年のリリースとなった。






エンジンはZX-10をベースにボアを2mm拡大した76mm×58mmの1,052cc。147ps/10,500rpmと11.3kgm/8,500rpmをシリンダー前傾角で17°と理想のアライメントに近づけるため2°変えて車体へ搭載。
そのアルミ製ペリメーターフレームも、ZX-10がベースながら同じリブ内蔵でも断面形状をより強度を求めて変更、エンジンをマウントするスチール製ダウンチューブを含め強靭かつ低重心な構成としている。
カウルのデザインは空力への注力で空気抵抗係数CD値0.3を達成、そして最大の特徴はカウル前面の左側にポッカリと口を開けたラムエア取り入れ口。
1993年のD型から取り入れ口はふたつに増えたが、トップスピードの高まりを大容量のエアクリーナーボックスで加圧、キャブレター側と圧力を均一にするなど本格的なパワーアップに貢献していた。
そしてスピードメーターはフルスケール320km/h。一部雑誌では実速300オーバーが記録されるなど、最速アピールが知れ渡った。
フランス・カワサキのレントゲンに車体を翳したキャッチコピーが、Meme nous, on ne comprend pas pourquoi elle marche si fort.(なぜここまで苦労するのか私たちも理解不能)というほど、全方位に及ぶ空力や高速安定性にハンドリングへの蓄積してきたノウハウを事細かに反映していたのだ。



かくしてデビュー時のC1では仕向け地によってはGRND TURISMOと、単にスーパースポーツやフラッグシップを標榜しているのではなく、GTツーリングモデルをアピールしてファンへの浸透をはかり、その成果から評判も高まってみるみる目立ったヒットを記録するまでになっていた。
主要マーケットのひとつ、アメリカではネーミングも定評のNinjaを冠してZX-11とイレブン(1,100ccの意味)を強調した凄みをきかせる戦略を展開。
ただ国内では1989年の東京モーターショーへ参考出品されたときも、ゼファー人気に注目が集まりオーバー750の国内規制もあって注目されず。
後に海外での評価に遅れるカタチで、逆輸入車のトップセラーへと一気に需要が激増したのはご存じの通り。

「A Legend in Its Time」時代を超越した伝説……。1992年のケルンショーでモデルチェンジを発表したD型シリーズは、ラムエアダクトをふたつに増やし滑らかな曲面構成をより進化、サブフレーム部分と一体化したフレームや燃料タンクを増量、リヤタイヤを180/55とするなど、痒いところへ手が届く圧倒的な完成度でさらなる勝負にでた。
スペック的にはC型シリーズと大差ないが、最速かつ洗練さが加わったことで人気を絶大なものへとすることに成功。
なかでもハンドリングがフラッグシップモデルではイメージしにくい軽やかさと扱いやすさで評価も高く、ライバルなき状態を当面続けることができた。

カワサキの特徴のひとつとして、硬派をイメージさせる単色のカラーリングがあるが、もういっぽうでツートンのグラフィカルな塗り分けも個性のアピールとして成功を支えた要素となっていたのも忘れられない。
ここまで直線や曲線を多用してのグラフィック処理は、後にフラッグシップを構築するライバルメーカーへも影響を及ぼしたが、手慣れた手法としての定着ぶりは圧倒的な差を感じさせていた。



1997年型から明るいパールジェントリーグレーと硬派一点張りだったカワサキのイメージも拡がりをみせ、1998年からはアンダーカウルとを塗り分けたツートンも加わり相変わらず細かな改良が躊躇なく加えられ、リーダーとしての熟成が着実に進んでいる。

そして1999年モデルからフレームを黒くペイント、最終型の2001年モデルでは、スピードメーターを320→280km/hへと改められ、排気ガス対応のKLEENを全仕様に搭載して有終の美を飾ることとなった。
2002年からはZZR1200、2006年にはZZR1400へと最速フラッグシップは進化を続けていったが、レーサーレプリカ系列のZXRやスーパースポーツ側でZX-12Rと、カワサキならではの棲み分けがあり、それはとりもなおさずビッグバイクの使われ方やライフスタイルの違いをどこよりも理解しているメーカーだったからだ。



