アンチレプリカ、アンチ4気筒、VT250Fを凌ぐ存在で開発!
1985年12月、カワサキは水冷DOHC2気筒で、それまでのメーカーイメージでは異端ともいうべきシティ派のお洒落なスポーツバイクをリリースした。
Z1以来、大型を得意としてきたカワサキには、250単気筒スポーツも存在したがいかにも小型バイクユーザー向け。それがZ750FXで人気だった角ZデザインのZ250FTが1979年にデビュー、250ccながら大型からのラインナップとして本格派のフォルムで人気となった。
続いて大型GPzシリーズの末弟としてGPz250が、フルフローターと凝ったリヤサスとベルト駆動の斬新な装備で続いていたが、依然として空冷SOHC2気筒のまま。
ただ250ccクラスは、1983年にスズキがGS250FWでクラス初の4気筒をリリース、周囲へその飛び火がはじまったのと、2ストのGPマシンレプリカで勢いをつけていた。
カワサキはこうした状況へ、独自の取り組み方でチャレンジすることを決定。
先ず4気筒化は250ccの排気量では2気筒よりパワフルでトルクのあるエンジンは望めない。次にZ250FTをはじめFXシリーズの人気が、いかにもレーシーな雰囲気ではなく、あくまで一般公道を前提とする硬派としての基本姿勢は変えないこと。
ただホンダVT250Fという、250ccのスーパースポーツとは如何にあるべきかを動力性能とデザインの両面で新たなパッケージを成功させたように、独自のアプローチでそれを超えられないかという課題が浮上していたのだ。
こうしていかにもレーシーなフォルムではなく、かといってトラディショナルでもない斬新なデザインを纏い、動力性能では明確に4気筒を凌駕する初の水冷DOHC250ccツインによるパワフルなパッケージが誕生することとなった。
水冷DOHC4バルブ燃焼室となったGPZ250Rは、62mm×41.2mmのショートストロークで248cc。43ps/13,000rpmと2.4kgm/11,000rpmで回転計は16,000rpmフルスケールが14,000rpmからレッドゾーンの超高回転型スペックだが、7,000rpmの中速トルクを引き出すチューン。
180°位相ツインのクランクは前方に一軸バランサーを駆動、この振動対策でフレームはエンジンを強度メンバーとするダイアモンド型式となり、乾燥重量138kgで超軽量コンパクトに収めていた。
さらに独得なフォルムのエアロダイナミクスに配慮した造形と、これをグラフィカルに特徴づけるシートやニーグリップ部分のデザインが、これまでにない個性を放っているのは説明する必要もないだろう。
着せ替えなど新しいバイクライフ提案と醍醐味ある乗り味にこだわる!
さらにこのGPZ250Rには、黒・赤・白・シルバーの車体4色に、シート・ニーグリップで黒・赤・白・イエロー・ピンクにスカイブルーや淡いグリーンなど、バリエーションのパーツが用意され、その日の気分やどこへ出かけるかで着せ替えができるという斬新な提案がされていた。
そして肝心の走行性能については、中速域でのピックアップ・レスポンスが4気筒を遥かに凌ぐクイックさと力強さで、コーナーからの脱出では旋回加速に優れるコーナリングを発揮。
前後が小径16インチとクイック且つグリップ力も兼ねた足まわりは、ライダーの操作に一体感を伴うバランスの良さで、ビギナーでも戸惑わずに身を委ねたり攻めたりができる、秀逸なハンドリングに仕上がっていた。
とはいえ、250cc4気筒の大型バイクや400スポーツと肩を並べる車格の魅力は大きい。2気筒がどんなに効率が良く、競えばワインディングで4気筒を寄せつけないと豪語しても、ひとクラス下にみられてしまう差は動かし難かった。
そして着せ替えという画期的なフィーチャーも、硬派を自認する支持者が多かったカワサキ・ファンには何とも軟派で受け容れにくい質のモノだったのは間違いない。
こうして短い期間のチャレンジに終わったGPZ250Rだったが、続くGPX250Rではこのポテンシャルの高いツインをはじめ、様々ノウハウが引き継がれシェアを拡大していったのだった。