気づかぬうちに曲がるとき上半身をちょっと立てて後輪を軸にする
現存する世界のバイクブランドの中でもっとも古いと言われるロイヤルエンフィールド。創業1901年という老舗メーカーが誇るINT650とCONTINETAL GT650は、最新空冷ツインでもわかりやすく英国流儀の乗り方が自然と身に付く。この2台の英国流は、現在どの英国メーカーよりも際立っているといえる明確さだ。
かつてトライアンフ、BSA、ノートン、マチレス、AJS……英国の名だたるバイクメーカーがまだ健在なりし頃、ドイツを拠点にヨーロッパを転戦していたボクは、英国へ遠征している際に、よく耳にした英国ライダー達の講釈があった。
BMWは確かにラフな路面でも重心が低くて安定しているから速く走れる。機械としては優秀かも知れん、しかし人が操るモノとしては英国製が一番。乗り手と一体感で極める乗馬術を知る英国人は、軸足で蹴りながら曲がる作法がベースだ。ドイツの乗せてもらってるのと違い、操ってナンボが英国流。
だから舗装してないところでも後ろ足を軸にこうして、うんぬん……。
バイク操作と乗馬術。まさに酒の肴のような話題ではあるが、従兄弟が競走馬の牧場主で、尋ねたときに改めて騎手が乗って走るシーンを見てみると、馬は速度の遅いときは前脚も行きたい方向へ先に出し、少しでも駆け足になると前脚は曲がる方向を意識して内側に出すことはしない。背中から腰、後脚を含め、確実に体幹で斜めに曲がっていこうとする態勢になっていることがわかる。なるほど……。
曲がり方に「品がある華麗さ」を感じさせるなんて
確かに英国バイクに乗ると、常に後輪で路面を踏ん張り、曲がるときも後輪の旋回がはじまるように上半身をちょっと起して体重を後ろへタップリと載せる。同時に前輪に余計な荷重がかからないよう、意識してハンドルからチカラを抜く。そんな風に自然と意識した扱いになるのだ。
そもそも後輪と前輪を使い分ける意識は、世界中どのバイクだろうとキャリアのあるライダーなら実践しているはず。とはいえ、英国バイクメーカーのエンジニアが実際に乗馬作法を設計に取り入れているとは思えないが、その基本動作の優先度合いそのままに操ってしまうのがロイヤルエンフィールドなのだ。
このように、その素養は依然として英国流儀を強く感じさせ、それが「乗り味の決め手」であると自信をもって断言できる。INT650とCONTINETAL GT650に試乗するチャンスがあるならば、ぜひ乗馬の講釈を思い出していただきたい。曲がりはじめるとき、上半身をやや起き上がるようにして、ハンドルからチカラを抜いて曲がりたい方向へ顔と両肩を向ける……。楽しい領域へすぐに馴染めてしまう嬉しさに、思わずニヤッとしてしまうに違いない。
街中の小さなターンでも、曲がり方に「品がある華麗さ」を感じさせるなんて、滅多なことでは体感できない。そう気高さがロイヤルエンフィールドにはあるのだ。
INT 650
価格:77万6,000円~
クラシカルなテイストが目を惹く1台。空冷SOHCの4バルブエンジン搭載で、ライポジも扱いやすい位置関係。厳しいEURO5排気ガス規制でも快活に走るスポーツ性を感じさせる
SPEC
- タイヤサイズ
- F=100/90ZR18 R=130/70ZR18
- 全長/全幅/全高
- 2122/789/1165mm
- 燃料タンク容量
- 13.7L
- 価格
- 77万6,000円~