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Royal Enfield
HIMALAYAN

【ロイヤルエンフィールド ヒマラヤ インプレ vol.2】ハイテクアドベンチャーモデルにはない、真のオフロード力

ヒマラヤには最新の電子デバイスも誇るようなパワーもない。しかしながら、悪路を乗り越え、確実に目的地までたどり着ける突破力が備わっていた。

ロイヤルエンフィールドには、「クラシック500」と「バレット500」という空冷ストロークOHV単気筒モデルが存在している。いずれも499ccの排気量を持ち、エンジンの源流をたどれば半世紀以上もさかのぼるリアルクラシックだ。

対する「ヒマラヤ」のエンジンはまったく系統が異なる。排気量が411ccというだけでなく、バルブ駆動にはSOHCを採用し、バランサーも装備。このモデルのために白紙状態から設計されたもので、開発のスタートは10年ほど前のこと。技術的にも精度的にも洗練されたユニットである。

とはいえ、味わいが薄いとか、快活に回り切る、という意味ではない。たとえば78mm×86mmのボア×ストロークから想像されるのは、いかにものんびりしたキャラクターであり、実際その通り。スロットル開度に対するレスポンスは微開域が穏やかで、中開度域から徐々に追従してくるマイルドな味つけが施されている。

同じような排気量の空冷単気筒といえば、ヤマハの「SR400」がある。ノスタルジックさの象徴ながら、そのボア×ストロークは87mm×67.2mmだ。ヒマラヤのそれが、いかにロングストロークなのか、つまり古典的なのかが分かる。

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ハンドルの高さとシートの低さによって、安楽なライディングポジションが確保されている。メンテナンス時に便利なセンタースタンドを標準装備。車体価格は、62万5000円(税込)に設定され、極めてリーズナブルだ

低シートがもたらす圧倒的な安心感

こうしたエンジンの素性が、不整地を走らせた時に活きる。右手の動きが少々ラフになっても反応が鋭すぎず、リヤタイヤがいたずらに路面をかきむしらないからだ。徐々に盛り上がるパワーが無駄なくトラクションに変換され、グリップが期待できないような路面でも力強く、そして確実に車体を進めてくれる。

エンジン自体も粘り、アイドリング+αの回転数でもノッキングを感じさせることなく、トルクを維持。歩くような速度も難なく許容してくれる。

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コアガードを持つエンジン冷却用のオイルクーラーを装備。ギアボックスは5段

加えて、800mmのシート高がいい。つい低速走行をしてしまうのは、この足着き性のよさによるところが大きく、いちかばちかのスタンディングで悪路を突っ切るような蛮勇を掻き立てない。路面に不安があればシートにどっかりと座り、2輪&2足でジワジワと押し進めばよく、実際それが簡単なのだ。

ビッグアドベンチャーモデルでひと度バランスを崩すと運に任せるしかないが、ヒマラヤは自分の足で車体を支えることが可能だ。スピードはそこそこでも、ライダーを確実に目的地まで運んでくれるトレールバイク的な突破力が、いざという時に頼りになる。イメージとしては、「より寛容なヤマハ・ツーリングセロー」と表現して差し支えない。

フロント21インチ、リヤ17インチのホイール径も、その突破力に貢献。さらなる走破性を望むならブロックの高いタイヤを履き替えればよく、このサイズなら選択肢はいくらでもある。

もしも自分でヒマラヤを手に入れたなら、ハンドルはもう少しワイドなものにカスタムするに違いない。グリップ部分の実測値は750mm(バーエンドは除く)あるものの、あと数cm幅があれば、車体が振られた時の安定感がもっと高まるのでは? と想像する。

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シート高は、このカテゴリーの中ではかなり低い800mmに抑えられ、足着き性は抜群だ。リヤシートは一段高くなっているため、タンデムをしても良好な視界が確保されている。大型のリヤキャリアを標準装備

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ハンドル幅は、実測で約750mm(バーエンド含まず)。左側のスイッチボックスには、チョークレバーが備えられている

冒険心がくすぐられたなら

さて、日本の環境では不整地から離れ、アスファルトを走らせた時の振る舞いも重要だが、フロント21インチ特有の頼りなさや軽々しさはなく、標準装着タイヤのピレリ・MT60が高いスタビリティに貢献。コーナリング特性は「デュアルパーパスの割には」という前置きを必要としないくらい、ナチュラルなものに仕立てられている。

ただし、オンロードではブレーキにだけ注意が必要だ。ガツッとブレーキレバーを握ってもストッピングパワーの立ち上がりは緩やかなため、一般的なスポーツバイクと比較すると初期制動は甘い。オーナーは一度急制動を試すなど、限界域を体感しておいた方がいいだろう。

低シートの扱いやすさや、アップライトなライディングポジションがもたらす安楽さはオンロードでもポジティブな要素しかなく、のんびりとしたツーリングへいざなってくれる。快適な巡航速度は100km/h強といったところ。目的地まで高いアベレージで走るタイプではないものの、このモデルのスタイルとスペックに惹かれたライダーにとって、それはネガティブな要素にならない。

昨今のアドベンチャーモデルがどんどん絢爛豪華になる中、「素」の魅力で勝負しているヒマラヤには確固たる個性がある。それでいて充分なパフォーマンスがあり、しかも62万5,000円というリーズナブルさも兼ね備えているところが素晴らしい。

メーターの右下には、進んでいる方向と方角を示すディスプレイが備えられている。冒険心をくすぐるこうした装備にグッときたなら、ヒマラヤはかけがえのないツールになってくれるはずだ。ここではないどこかへ。そんな思いに応えてくれるモデルである。

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フレームのアンダーパイプとクランクケースを守るアルミプロテクターを標準装備。高低差のあるセクションを乗り越える時など、パーツに対する衝撃を最小限に留めてくれる

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アナログと液晶ディスプレイが組み合わせられたメーター。速度計は「km/h」と「mile/h」が併記されている

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協力/ ロイヤルエンフィールド東京ショールーム

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