強いオリジナリティを求めていたスズキの意欲と結びついたプロジェクト

スズキが1976年からGS750で手がけた4ストローク化は、ヨシムラとタッグを組んでプロダクション・レースへ積極的に参加するなど、そのパフォーマンスは存分にアピールできていた。
ただ市販車での成果はいまひとつ。既に見慣れた4気筒エンジンに、タンクのロゴをSUZUKIとしただけの、日本製バイクのひとつ程度にしか思われていない。
そこでスズキならではの世界から注目を浴びる強烈な個性を採り入れようと、ドイツで個性的なデザインを試みていたターゲット・デザインとのプロジェクトがスタートした。



1980年、ドイツで開催されたケルンショーに、既存のデザイン概念を完全に突き崩す1台のプロトタイプが登場した。
それがご存じGSX1100S「KATANA」で、1981年に販売を開始。
ただこのGSX1100S に先行して、ターゲットデザインとスズキは後にGS650Gとなるプロトタイプを試作していた。
実はヨーロッパで600~650ccクラスに、趣味嗜好の強い個性的なバイクを好む層がいて、当初はまずこのバイクで先鞭をつける案で進行していたのだ。
それはツーリングユースへの対応も意識したコンセプトで、ヨーロッパでのリリースには専門的な解説とデザインの感性を表現するカタログから伝わるように、オトナ向けを強くアピールしていた。




このGS650G、ほぼ同時に開発されていたシャフトドライブのミドルクラス・ツーリングユーザー向けのGS650GTがベース。
ボア×ストロークが62mm×55.8mmの673cc。気筒あたり2バルブのDOHCヘッドで、65PS/9,500rpmと5.3kgm/8,000rpmのスペック。
典型的なツーリング・スタンダードでヨーロッパから北米まで広く販売されていた。
果たしてGS650Gは、そのデザイン性の強さから好みがわかれるところもあって、前評判ほどは販売が奮わず、翌年にはヨーロッパでのクルージングスピードへ対応したミニカウルが装着されたり、グラフィックも一新するなど毎年マイナーチェンジが加えられていた。
それからかなり経ってから、この個性的なデザインがあらためて注目されるようになり、世界各国で希少な名車として人気のバイクとなっている。