'60年代に世界GPを席巻した日本メーカーの次なる目標は、海外市場で高額な大型スポーツバイク。
しかし大排気量となると、2ストロークエンジンは潤滑オイルが燃える白煙や発熱の問題で次第に不利になっていた。
しかしスズキは定評ある2スト技術で見事にナナハンを1971年にデビューさせたのだ。
その鍵となったのが、世界GPで磨いた水冷化テクノロジー。
日本メーカーの市販車では初の2スト水冷エンジンは、空冷の冷却フィンが不要であるのをアピールする、ノッペリと滑らかに磨かれた表面で、空冷ではセンターの気筒が冷却問題を抱える3気筒というチャレンジの塊りでもあった。
さらにエンジンのみならず、トップスピードが180km/hを超える重量車には通常のドラムブレーキでは役不足で、世界GPマシンと同様に両面にブレーキパネルを持ち、冷却用の空気取り入れ口を設けていたのだ。
120°クランクの2スト3気筒は、
ウルトラスムーズ且つ中速域からトルキーで
重量バイクに似つかわしくない俊足を誇った!
2ストロークエンジンの3気筒は120°クランクと、爆発間隔が均等で短いため振動もなくシルキーな回転で人々を驚かせていた。
さらに爆発間隔から大排気量の2ストならではの中速域で力強いトルクを発揮。そのスムーズにダッシュしていく俊足ぶりがファンを魅了したのだ。
そのデビューの翌'72年、アメリカはデイトナでこのエンジンをベースとしたTR750が参戦。
ビッグマシンでもカワサキ以外で2ストが通用する水冷テクノロジーを見せつけていた。
その後、特殊な両面パネルのドラムブレーキもディスクブレーキへ換装となり、1976年に4ストロークDOHC4気筒のGS750のデビューへとバトンタッチするまで、スズキのフラッグシップとして堂々の佇まいを誇っていた。
特徴ある3気筒なのに4本となったマフラーは、中央のシリンダーからのエキゾーストを左右へ振り分けた構造。
貫録あるルックスを助け、空冷3気筒で大人気車種となったGT380でも、この4本マフラーを採用していた。
スポーティさより豪華なフラッグシップさをアピール、
ラバーマウントの防振機能と相まったシルキーフィーリングは唯一無二!
おそらく実際に乗ったことがないと想像できないほど、GT750の水冷3気筒ならではのシルキーフィーリングは異例といえる快感に満ちていた。
誇らしげな大型ラジエーターをアピールするデザイン、その冷却ラジエーターキャップを大きな燃料タンク前方へ配した構成など、世界で類をみない2スト・フラッグシップの威風堂々たる存在感は、いま見てもインパクトに満ちている。
その意地と自信の塊りには、同じく2ストメーカーだったヤマハやカワサキとは一線を画した気品さえ漂ってみえる。