ツアラーでありスーパースポーツでもある、既存のカテゴリー区分刷新を狙った意欲作!

1990年代へ入る前、スズキは海外でマーケットの大きなスポーツツアラーを意識してGSX600Fをリリース。
ヨーロッパではビッグバイクで高速道路を使った長距離ツーリングをするライダーが増え、これがより手に入れやすい価格帯の600ccミドルクラスへも波及してきた。
その新しいゾーンを狙い思い切った構成で開発したのがRF600Rだ。

前作GSX600Fは、ヨーロッパの耐久レースブームに乗って登場したGSX-R750の「油冷」750ccを600ccにスケールダウンして搭載、快適性を最優先するエアロフォルムを纏うコンセプトから、フレームはアルミではなくスチールの角断面パイプで手堅く構成、タンデムしやすいサイズということもあって人気を集めていた。
その次のステップとしてスズキが構築したコンセプトは、エンジンを最新の水冷600ccとして車体を大柄にしても軽量高剛性を狙うスチール鋼板、さらにエアロフォルムを画期的なプロテクションを熱気抜けも兼ね、スリットが際立つ大きなサイズ感をアピールする革新的なデザインとしたのだ。
そのコンセプトを国内向け400cc版としたRF400Rも同時開発され、1993年にリリース。




エンジンはBANDIT系をベースに、56.0mm×40.4mmの398ccで53ps/11,000rpmで3.8kgm/9,5000rpmと新しくなった自主規制値スペックだが、中速域を重視したチューン。
水冷オイルクーラー(オイルフィルター部分)とラウンド型(湾曲した)ラジエーターと、フルカウル装備での冷却対応にも配慮している。
フレームもご覧のプレス鋼板で車体色にペイント、車重はビッグバイクの車格でも乾燥で185kgに収めていた。
コクピットには内張りや蓋つきポケットを備えるなど、400ccクラスには珍しい贅沢仕様だ。
デビュー時のキャッチはツアー・ド・フォース。フランス語でクリエイティブな力作、様々な使用状況に対応する広範囲なキャラクターをアピールしていた。
そして実際、一見してツアラーに見えるものの、スーパースポーツ的な攻めた走りでも醍醐味を楽しめるハンドリングに仕上げていて、キャリアのあるライダーからの評価も得ていたのだ。




とはいえ、ビッグバイクに見えても400ccのパワーでは限界もある。
そこで1995年から、BANDIT系でも採用されたVCエンジンを採用。
これは各気筒に、低回転域用のタイミングが遅くリフト量も少ない低速専用カムと、高回転域専用にセットしたタイミングとリフト量の大きなカムを2つ配置し、回転域によって切り替えるという革新的で高度なメカニズム。
他社の2バルブと4バルブを回転域で切り替えているのとは全く異なる方式で、DOHCのふたつのカムカバーが赤くペイントされ、フレームの間から確認できるという粋なはからいと共に、オトナ向けのコンセプトを貫いていた。



RFシリーズは900ccクラスにも用意され、国内にも逆輸入されていたのでこの特徴的なデザインを見かけることができたが、需要が少ないと思われたRF400RとRF400RVも、1999年まで粘り強く継続されたのだった。