XJ650を900まで拡大した人気のマイルドスポーツ路線へ遂にNewエンジン投入!
ヤマハは伝統的にスポーツバイクには扱いやすいマイルドさが必要というフィロソフィを貫いた時代が長かった。
その典型が1980年のXJ650。スーパースポーツに限りなく近い領域を狙いながら、シャフトドライブで安定性をベースにニュートラルな軽快性を醸し出す高度なまとまりで、ヨーロッパで優れたハンドリングと評価が高かった。
そのコンセプトの延長上で、より排気量の大きなニーズに応えXJ900までサイズを拡大。そもそも653ccだったのを同じベースで853ccまで大きくするのはかなりのチャレンジだったが、ツーリングスポーツで腕の立つライダーから厚い信頼を得ることに成功していた。
しかし1990年代にスーパースポーツはリッターマシンに、ツーリングバイクもFJ1200のように排気量をさらにアップするようになり、ヨーロッパでは乗りやすいミドルクラスベースの900ccあたりが欲しいという声が高まりはじめたのだ。
このハイパーマシンだらけに、まずミドルクラスでもっとベーシックなスポーツを見直そうという気運にヤマハが応えたのがXJ600SのDiversion。
日本国内向けにも400ccで同じDiversionをリリースしたので憶えている方も多いと思う。ただ日本では、ネイキッドブームなどメインストリームが全く異なり、コンセプトの訴求ができない状況で、儚い短命で終止符が打たれている。
しかしヨーロッパでは、あえて空冷、あえて2バルブという設定が大きな共感を呼び、ロングラン・モデルとして着実にシェアを獲得していった。
この理解度にヤマハは900ccで空冷DOHC2バルブ4気筒、そしてシャフトドライブの車体構成を企画、これまでXJシリーズの蓄積したノウハウでマイルドさをベースにスポーティな感性へと仕上げることに成功したのだ。
Diversionコンセプトは600と共にヨーロッパでは支持層も多い
1995年にデビューしたXJ900S Diversionは、68.5×60.5mmで892cc、パフォーマンスは65.8kW(89.4PS)/8,250rpm、83.3Nm(8.5kgm)/7,000rpmで、スチールパイプフレームでも239kgに収め、ホイールベースは1,505mmと高速領域を意識したハンドルング。最高速度は209km/hで0-100km/hは3.9秒だった。
そしてメーカー純正のタンクバッグからパニアケースまで用意され、ヘビーなハイエンドツーリングバイクに乗らずとも、もっと気軽にタンデムツーリングへと誘うキャンペーンを展開。
ウインドシールドも、上部のスリットがヘルメットの風切り音や、雨天時の視界確保などに功を奏すると好評で、実用性を優先してきたこれまでの経験が見事に活かされていた。
このどちらかといえば地味なコンセプトのDiversion、評判が評判を呼びヨーロッパでは2002年モデルまで存続する手堅い存在だった。
中庸なモデルは確かに派手さもなく、なかなか手が出にくいカテゴリーではあるが、キャリアを積んだライダーには自分にとってのメリットを優先する価値観があるはず。ヤマハが信じてきたのは、まさしくそこの共感狙いだったのは間違いない。