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MotoGPライダー、ジャック・ミラーの「ストッピー・チャレンジ」【brembo NEWS Vol.3】

神業の秘訣はブレンボ製ブレーキ

近年、スーパーバイク世界選手権(SBK)の選手の間でストッピー・チャレンジが大流行。選手がピットレーンに戻るとき、特に好成績を収めた後は(順位が悪かったらはしゃぐ気になどならないだろう)、ウイリーを真逆にした走りを披露している。

前輪を地面から上げるわけではないので、実は割と簡単にできる技だ。マシンが100馬力超で、その総合重量を考えればなおさらのこと。MotoGPでのマシンの最低重量は157kg、スーパーバイクは168kg、Moto2ではライダーの体重込みで217kgだ。

こうした数値を実現させているのが、驚くべき軽さのブレンボのブレーキパーツとマルケジーニのホイール。17インチの鍛造マグネシウムホイールは前後輪でわずか6kg。MotoGPのマシンが採用している4ピストンモノブロックキャリパーは、アルミニウム・リチウム合金のインゴットから削り出す製法によって、1台分の重量を1.5kg未満に抑えている。

ストッピーは、前輪を地面につけたまま後輪を宙に浮かせるが、このとき必要なのは速さではない。速さは技の出来にはむしろ逆効果。スタントマンに聞けば時速40~60kmでも大丈夫と全員が答えるだろう。

最近2シーズンで回数が最も多かったのは、プチェッティ・カワサキでデビューし、現在はヤマハに所属するトプラク・ラズガットリオグルだ。彼のマシンコントロールは明らかに群を抜いていて、マシンを前輪で90度に直立する妙技を何度も披露している。

彼の場合、たいていはギヤを2速にしてピットレーンに時速80kmで進入。そして前輪に1.2~1.4MPaの圧力を加える。後輪が浮き上がったら圧力を0.2~0.3MPaまで緩め、バランスを保つ。その後、ギヤを1速に落とし、後輪にブレーキをかけて着地するのだ。

プラマックのジャック・ミラーもストッピーを始め、2020年2月のセパンでのテスト日に、ドゥカティ・デスモセディチで披露。翌年1月のヘレスのテストでは、ステファン・ブラドルもホンダRC213Vで技を見せた。ルーカス・マヒアスもカワサキ・ニンジャZX-10RRで加わっている。彼ら3人には共通点が1つ。それはブレーキディスク、キャリパー、ブレーキパッド、マスターシリンダーを含むブレーキシステムが、全員ブレンボ製だということだ。

この事実からも、ブレンボのブレーキパーツの性能と信頼性が、世界中のトップ選手からいかに頼りにされているかがわかる。MotoGP、Moto2、Moto3、そしてMotoEの全選手に加え、SBKの大半の選手までもが皆ブレンボ製ブレーキシステムを使用しているのは、単なる偶然ではない。

ストッピーでは、後輪は無視して前輪にだけ強いブレーキをかける。体位も重要で、まず、ひじは固定しないこと。一方でひざは内側にぐっと寄せて、燃料タンクを締め付けるように力を入れる。

コンマ数秒後には、転倒しないよう徐々にフロントブレーキを緩めていく必要がある。この間、後輪は浮いていて、下がり始めるまではリヤブレーキを使用してはいけない。

ストッピーの早い段階でリヤブレーキを操作してしまうと、後輪が回転を妨げられたことでマシンとライダーのバランスが崩れてしまう。また、不自然な体勢で身体を前のめりにするのも間違い。マシンとライダーを一体としたときの重心がずれてしまうからだ。

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SBKの選手がストッピーをする際は、ブレーキレバーには、マシンのマスターシリンダーの径によって7.2kgまたは6.5kgの力を加える。これに対し、例えばカタールGPの1,068mのストレートエンドで第1コーナーに進入する際の力は6.1kgだ。

お気づきかと思うが、低速でのブレーキなので高いエネルギー量は必要ない。ただしブレーキトルクは高い方が有利だ。トルクの値はブレーキディスクの有効半径、摩擦係数、そしてキャリパーの締め付け力に正比例する。

当然、マスターシリンダーは高レスポンスかつ調整が効くものであることが必須。ブレンボには流体力学や動力学、人間工学が関わるパーツの設計経験が豊富なため、ブレンボ製マスターシリンダーは、加えた力を直線的に制動力に転換できるのが特徴だ。

いずれにせよ、ストッピーはピットレーンで行われるため、レースマシンのブレーキシステムにマイナスの影響は及ぼさない。ピット上での低速はブレーキパッドとブレーキフルードの温度はかなり低いので、ブレーキシステムが熱ストレスの危険にさらされることはないのだ。

ただ、こうしたおふざけには各チームのマネジャーたちが眉をひそめている。クランクケース内のオイルの流動を心配する声もあるが、機械部品が壊れる危険を理由に難色を示す人は多くはいない。転倒したり、無駄な怪我を負ったり、マシンの一部を壊したりする危険、そして単に、ふざける姿を数多くのカメラにさらすことに対して心配しているのだ。

二輪で行う曲乗りのうちストッピーが最も危険だとされているのは、決して意外な話ではない。行なっている間は動きの見通しがきかないからだ。なので、公道でもサーキットでも皆さんにストッピーはあまりお勧めできない。

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Jack Miller stoppie | 2021 #AragonGP

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協力/ ブレンボ