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賢者の選択、ROSSO Ⅳ(クワトロ)!【ライドナレッジ067】

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柴田直行

ハイグリップタイヤほど安心……はちょっと違う

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発売から1年を経たDIABLO ROSSO Ⅳ(クワトロ)と右は発売間もないハイグリップ版CORSA

まず万一の安全を考えたら、コストを惜しまず最もグリップするハイエンドモデルを必ず履くと仰る方にひと言。
サーキット走行を前提にグリップ性能を高めたモデルでは、ちょっとでも路面が濡れたり、舗装が荒れていたり、秋から春までの気温が15℃以下など、どの条件でもツーリングスポーツのカテゴリーにグリップ力で敵わないのが厳然たる事実。
確かにハイグリップタイヤは、好条件下であれば、限界付近の性能はさすがの高次元レベルにある。ただ万一のミスをリカバーしてくれるグリップ性能となると、これもハイグリップタイヤが優位とはいえない。
つまりフェイルセイフ側でタイヤを選ぶなら、ハイエンドモデルでないほうがリカバリー能力が高く、たとえばこのDIABLO ROSSO Ⅳがベストチョイスとなるのだ。

Ⅳ(クワトロ)の4世代目は全てに従来を覆す進化が

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タイヤの基本性能を構築するのに、最も重要な役割を担うのがカーカスと呼ばれる内部の繊維構造。
これをラジアル化されてから、ここまで大きく変えたことがないほど、全てに大改革と呼べる大前提を覆す仕様としたのがピレリのDIABLO ROSSO Ⅳで、ちょうど1年前のリリースだった。
そしてグリップ性能を高めたDIABLO ROSSO Ⅳ CORSAがリリースされたのを機に、あらためてベーシックな革命児たるROSSO Ⅳ(クワトロ)に試乗した。
装着したのはドゥカティ・モンスター1200Sのファイナルモデル。フロント120/70ZR17とリヤが少しワイドな190/55ZR17。
走り出すと、大袈裟でなく僅か数メートルで、いかにDIABLO ROSSO Ⅳが他のタイヤと異なるかを明確に伝えてくる。
何より最大の違いがそのデフ(凹む)量。まるで空気圧が半分以下しかないと思わせるほど、ベッタリと平坦な路面に貼り付くような変形ぶりだ。
まるでひとまわり以上も太くなった印象だが、付随してくる粘るような重さはない。そして路面の不整を伝えにくい減衰特性がたっぷりした足応えで安心感に包まれる。
もともとピレリは、トレッドのグリップが破綻するきっかけとなる振動が出にくい特性だが、DIABLO ROSSO Ⅳはかなりラフな動作や操作を与えても、すべてにジワッと吸収と受け止める両側の懐が深い。
驚く安定感と粘らない従順な軽快感をみせる。トラクションの路面を広範囲に掴む能力がハンパないが、ブレーキングもフロントはもとよりリヤも想像を遙かに越えるストッピングパワーに驚かされる。
1年前のデビュー時に、DIABLO ROSSO CORSA II よりグリップするとはさすがに言えない……とピレリ関係者が呟いていたのが思い出される。
もちろんトレッドが直接路面に押し付けられるコンパウンドも優れているが、そもそもベースがハイグリップ仕様ではなく、そのポテンシャルはカーカスの柔軟な追従性と減衰特性で発揮されているからだ。

隣り合った糸に間隔を空けるこれまでにない発想や、スチールベルトもセンターとショルダーでは締めつけを変えた、ことごとく従来を覆す仕様

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左のROSSO Ⅲに対し右のROSSO Ⅳは繊維が太く強靭さが与えられ、繊維の間隔が拡げられ追従性(柔軟性)も得ている

ROSSOⅠ~Ⅲで進化してきた経緯をジャンプする大幅な技術改革となったのは、ROSSO Ⅳのラジアル(放射状の意味)方向のベルトと90°で直行する一番内側のカーカスだ。
このホイールのリムからリムまで、タイヤの断面構造を横断する繊維を、ROSSO Ⅳでは1本を太くして強度をアップしながら、お互いが並ぶ間隔をやや空けて柔軟性を高めることで路面に張り付くしなやかさを得ると同時に、以前のように高荷重でタイヤが潰れていく、感覚的にはわかりやすいイメージを抱くものの、実際にはスリップがはじまってからの過渡特性で変化に勢いがつきやすいのを、かなりの高荷重でもたわんで応える範囲を広く与えるフィードバックを得ている。
しかもスチールベルトのほうも、束ねたスチール繊維の密度とテンション、つまり予め締めつけた特性とで、センターと両サイド(深いバンク角を担うショルダー部分)の3箇所で高める、つまりこの狭間の部分は剛性の低い追従性優先で、直立と深いバンクでは踏ん張れる剛性を優先と、大事な二面性を与えているのだ。

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またROSSO Ⅳは、ROSSO Ⅲから受け継いだトレッドのセンターと両サイドで異なるコンパウンドを配した構成を、ハイエンドクラスの190サイズ以上のロープロファイルでワイドな幅による配分比をそれぞれ設定するという、サーキット仕様と同じようなハイレベルのチューンとする進化が与えられている。
とくに繊維系の新しい構成は、製造行程に全く異なる生産技術を必要とする、タイヤメーカーでは大袈裟でなく世紀を跨ぐ大改革だ。
今回の大英断に、ライバルメーカーは暫く沈黙のままに過ぎてきた。このアドバンテージの差は当面の間は続きそうな気配で、DIABLO ROSSO Ⅳがベストチョイスの座にある期間も長そうだ。