4気筒が低速の登りコーナー加速で
2気筒に勝てなくなってきた……
以前スーパーバイクの世界選手権で、750ccの4気筒勢だけではなく2気筒は1,000ccまでOKにしたところ、ドゥカティに日本勢が負けはじめ、ハンデを負わせて後に4気筒も上限をすべて1,000ccとした経緯があった。
それでも2気筒勢が強く、とくに登りの低中速コーナー立ち上がりで、旋回加速のグリップで差が明確だった。
そこで日本メーカーも1,000ccツインのスーパーバイクを開発、ただ長年の蓄積で掴んだノウハウにはすぐ追いつかず、結局は諦めて4気筒開発へ集中していたのだ。
何がそのグリップの違いを生んでいたのか。それは爆発間隔だ。
エンジンは燃焼室の爆発の度に、ピストンが押し下げるチカラを後輪に伝えるが、その毎回の脈動は後輪が路面を蹴るときそのまま刻んだ動きを伴う回転となる。
この鼓動=脈動が路面を蹴るときのグリップを強めているのだ。
という差が明確になると、今度は他の2気筒にも変化が起きた。90°のVツインと同じ爆発間隔にすると、同様にグリップが強まるのがわかったからだ。
同じ2気筒でも爆発間隔でグリップが変わる!
一般的な2気筒のクランク位相はご覧のような360°。この等間隔のパルスでもエンジン回転が低ければパルシブな脈動を生じているが、中速以上の回転域となると270°のVツインに負ける。
そこでクランク位相(コンロッドのピン位置)をズラして90°のVツインと同じにして、クランク慣性をバランサーで釣り合わせたのが、270°のパラレルツイン。
この効果は絶大で、いまほとんどの2気筒はオンロード、オフロードにかかわらずこの270°位相クランクを採用している。
低い回転域ほど爆発のパルスが際立ち
旋回グリップを落とさず強く曲がれる!
爆発間隔が広いほど後輪がグリップ力を強めるワケで、大排気量のように低回転域でも強大なトルクが得られるのなら、まさにそうした回転域で旋回加速をしたほうが優位になる。
とくに低中速のコーナーでは、2速など低いギヤを使うとビッグマシンではすぐホイールスピンを誘発しやすい。
レースではそこにトラクションコントロールが介入すると、強い旋回が得られないため、ライダーは思いきり低い回転域を多用することが多い。
ましてやコーナリングの旋回グリップを失わないためにも、この低回転域を使ったトラクションが大切になってくるというワケだ。
というコトがわかってくるほどに、タイヤの潰し方、つまりトラクションを後輪にどう与えるかで効果が変わるというところに注目したい。
高い回転域で徐々にスロットルを開けていく乗り方は、スムーズなようで曲がるチカラは強められない。
むしろ低めの回転域で、グイッと大きく捻ったほうがタイヤも潰れてグリップと旋回力も高まる。
そしてこの回転域ならば、万一タイヤがスリップしても、ピークパワー域のような空転して最高出力のでる回転域へ一気に上昇する、ハイサイドの危険を回避しやすい。
もちろんトラクション・コントロールが介入すればリスクも避けられるとはいうものの、旋回グリップで効率は思いきり下がってしまう。
そうしたパフォーマンス・ライディングでさえ爆発間隔を活かすライディングが優位なわけで、そこまでチャレンジしないワインディングを楽しむ走りでは、なおのこと高い回転域は避けるのが賢明だ。
グリップの良いエンジン、グリップの良い回転域、そしてグリップの良いスロットル操作があることを、いまいちど理解しておこう!