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コーナーの加速でリヤが沈んで踏ん張ると感じていたら、曲がれる半分も活用できてないかも【ライドナレッジ061】

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藤原 らんか

アンチスクワットって知ってますか?

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加速でリヤは沈まない、もし沈んだらコーナー途中の加速で後輪は路面から離れてしまう!? だからピボットはチェーンがあたるほど高い位置に設定されているのだ

コーナーで加速すると後輪が路面を蹴り、トラクションの応用で旋回安定を高めてより強く曲がっていく……スポーツバイクでコーナリングの醍醐味を楽しんでいるライダーにはお馴染みのシーンだ。
しかし、このときスロットルを開けると後輪に加速Gも加わって、グイッと沈んで踏ん張ってくれるのでグイグイ曲がる、そう思い描いているとそれは大きな錯覚をしていることになる。
この加速で、つまりエンジンの駆動力が後輪に伝わるとき、たとえばチェーンの引っ張りでリヤサスが縮む方向へ応力が加わっていたら、つまりリヤが沈むことになり、後輪は路面への面圧を失って滑ってしまう。
そうならないよう、チェーン駆動ではスイングアームピボットが高い位置に設定され、駆動力がかかったとき後輪側は距離の短いほう、つまりリヤサスは伸びる方向へ応力が働くようにしてあるのだ。スイングアーム上面にゴムや樹脂製のチェーン・スライダーが装着されているのはこのため。これはシャフト駆動も同様で、90°方向を変換する駆動系の回転方向は、路面へ後輪を押し付ける方向に設定する。
この設定はアンチスクワット(しゃがみ込まない)と呼ばれ、リヤサスが沈んでもこの位置関係が変わらないよう、スイングアームを長くするのが最新の設計となっていて、コーナリングにはショート・ホイールベースが優位なためエンジンの長さを前後で縮める軸配置など、設計の基本が大きく変わってきてもいる。

グリップのきっかけこそが、曲がれるポテンシャルを左右する鍵を握っている

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中速域以下の低い回転でタイヤを撓ませるスロットル操作をすることで、路面を掴んで旋回へと変換していくポテンシャルは大幅にアップする

さて皆さんが走るワインディングでは、レースのような限界まで攻める走りは論外としても、昔ながらの甲高いシフトダウンのサウンドを響かせながらコーナーへ進入していくことに良い悪いがないのはいうまでもない。
街中ではなく人里離れた山の中で、せめてエンジンサウンドも楽しみたいと思う気持ちは当然あるだろう。
ただレースと同じで、コーナーへ進入してからの旋回が、高い回転域にあるのは安定しないだけでなくリスクもあるので避けたほうが良い。そうなるとブレーキを主体にエンジンブレーキを期待しない乗り方へと変わっていく。
趣味なのでどう楽しむかは皆さん次第という基本は変わらないが、新しいバイクなら新しい乗り方に技術を注ぎ込んでいるので、その仕組みの素晴らしさを利用しないのはもったいないと思うばかりだ。

リスクを避け且つポテンシャルを大幅にアップできる賢い走り方

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のけ反るような加速Gも棄てがたいが、爆発で路面を刻む回転域で最新タイヤの撓みを活かすほうがクールだ

もちろんレースではないので、MotoGPの走り方が最も良いとするのも違うだろう。しかし、究極のパフォーマンス発揮を競うレースでさえ、トラクション・コントロールが介入しない領域を多用することで、リスクも少なく旋回速度の高いグイグイ曲がれる走りを追求しているのである。
そしてトラクションが作用するときの、きっかけグリップにジワッと増大する特性を介在させるスロットル操作は、さらにリスクを避け確実にグリップ性能を得たいワインディングでの走りで参考にしたいマナーといえるだろう。
せっかくのハイパーマシン、ドッカーンと加速するスリリングな感触が楽しみたい、そこを優先されるのは趣味の領域なので良い悪いでは語れないと思う。
ただ、そうした強大なエネルギーとの闘いではなく、工夫の中に「もっと曲がれる」ポテンシャルを見いだすのも趣味だからこそではないだろうか。