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なぜダイネーゼは、ブーツをスーツの中に入れるのか?【DAINESE Topics.006】

スーツの中に装着するブーツ

1972年の創業以来、ダイネーゼはバイクをはじめとするダイナミックなスポーツの安全性向上に取り組んできた。

その研究の中で、プロのライダーが着用するすべてのパーツは、お互いのパーツと相乗効果を発揮するように設計されることで、より高い保護効果が得られることを学んだ。
ヘルメットとハンプ(背中のコブ)の風洞実験は、まさにその一例だ。

完全なプロテクションシステムを開発するにあたり、ダイネーゼは足と、足首の部分にも注意を払ってきた。1997年には、スーツの中に装着するブーツを初めて発表。

しかし、なぜあえて複雑な構造にして、ブーツの概念を覆すだろうか? ただルックスを目的としているわけではないことは確かだ。

ブーツは長年研究されてきた技術の集積であり、その技術力は、他のアイテムと比べても決して劣るものではない。
ブーツインシステムの利点は、些細なことではない。ライダーに提供できる最高のパフォーマンスのため、完璧さを追求しているのだ。

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パッシブ&アクティブセーフティ……?

アクティブセーフティとパッシブセーフティの違いは、見落とされがちなプロテクションの基本的な概念だ。

従来のプロテクターは、パッシブセーフティ、つまり衝撃からの保護のみを提供。

しかし、衝撃の発生を防ぐことはできない。

ライダーに対する衝撃を回避したり、ダメージを制限したりすることができる安全能力は、「アクティブセーフティ」と呼ばれている。

もちろん、これを実現するのは難しい事だが、ダイネーゼは、この目標を達成するために、人間工学、軽さ、動きの自由度という基本的な側面に焦点を当てている。

ダイネーゼのブーツインシステムでは、スーツとブーツは大きなベルクロで連結され、しっかりと固定。
この強固な固定により、アウトブーツ(※ここでは、ブーツが外、裾が中の一般的なブーツを指す)では実現できない安全性と安定性を実現する。

独自の歪み制御システムを備えたブーツとスーツの間のインテグレーション(一体化)は、足首のねじれを制限し、比類のない正確なライディングを可能にする。

スーツとブーツが一体となって機能するように設計・開発されており、従来のシステムと比較して、ライダーにより高レベルな安全性を提供している。

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予期せぬ事故を防ぐブーツ

これまで述べてきたように、アクティブセーフティの実現は、難しいものだ。痛みを伴う怪我を未然に防ぐためには、状況にとらわれない発想力と革新性が求められるのだ。

ブーツインのプロテクションシステムは、このような目標を念頭に置いて生まれた。

市場に出回っているブーツの多くは、蛍光色や大きくはっきりとしたロゴなどの美意識が重視されている。

スタイルは主観的に判断することができるが、一つ確かなことは、アウトブーツは外部の障害物に引っかかったり、バイクの部品にぶつかる可能性がある、多くの突起物がついているということ。ファスナーをはじめとした様々なパーツは、望まない物を引っ掛けてしまったりするのだ。

これらのリスクを回避するために、スーツとブーツを一体化させたのがダイネーゼの狙いの一つ。

ブーツを覆うスーツであれば、転倒の有無に関わらず、ライディング中に靴が開いてしまう可能性を排除することができる。

留め具やジッパーが露出していないため、自分のバイクや他のライダーのバイクなど、外部のものに引っかかる可能性が非常に低くなる。

このような望まない事故の発生を防ぐために、一体型のダイネーゼシステムが設計されている。

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怪我を減らすには、スピードを落とす

’90年代後半、ダイネーゼは足や足首の怪我を大幅に減らすことができるブーツの開発に取り組んでいた。

開発に貢献したのは、2000年の250ccクラス世界チャンピオン、オリビエ・ジャック。このフランス人選手は足首の問題に悩まされることが多く、この分野でのサポートの必要性をいち早く感じていたのだ。

スーツとブーツを一体化することで、より軽量でテーパードのある(先細りな)組み合わせが可能になった。また、ブーツの重量は、人が考えるよりもはるかに重要だ。そのためブーツインシステムの開発において、ダイネーゼは、驚くほどの軽量さを実現した。

重量を減らすることで、特にライダーが空中に放り投げだされるハイサイドのあいだ、落下中の足にかかる遠心力を低減させることができるのだ。遠心力が少ないということは、スピードが少ないということであり、地面への激しい衝撃が少ないというメリットがある。さらに軽量なブーツは、サーキットでの長いセッションにおける疲労が少ないのも特徴だ。

バレンティーノ・ロッシはこれを"スニーカーを履いているようなものだ"と表現している。

だからこそ、足でも手でも、軽さがダメージを抑える上で非常に重要なのだ。

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最大のパフォーマンスを発揮する瞬間

スーツの下のスリムな脚は、エアロダイナミクスの観点から、バイクのカウルとぴたりとマッチする。ダイネーゼのブーツに見られるディテールへのこだわりは、ファスナーを後ろに移動させたこと。このソリューションにより、ブーツの内側が滑らかに動くようになり、バイクとのコンタクトが最適化され、ライディング時のフィーリングが向上した。

スーツとブーツを一体化させるシステムは、20年以上前にダイネーゼが導入した、革新的なソリューション。

このシステムは、完全なプロテクションを求めるにあたり必要な、"シナジー"のわかりやすい例と言えるだろう。スーツとブーツ。ウェアを単に組み合わせるのではなく、お互いを統合するときに、最高の効果を発揮するのだ。

こうして初めて、個々のパーツの足し算以上の価値が生まれるのだ。

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AXIAL D1 BOOTS

Axial D1 Bootsは、最も進化した究極のDaineseトラックブーツ。レザーパンツの下に履くようにデザインされている。

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AXIAL D1 AIR BOOTS

スーツの内側に履くようにデザインされたパンチングメッシュレーシングブーツ。AXIAL D1 AIR BOOTSは、足と足首の安全性を最大限に高めるために、Axial Distortion Control System(捻じれ防止システム)を採用。

DAINESE
1972年にイタリアで設立された、モーターサイクルウエアブランド。数多くの有名ライダーにレーシングスーツを供給する。世界で初めて、バイク用のプロテクターを開発したことでも有名。デザイン性と安全性は、"From Head To Toe(頭からつま先まで)"のコンセプトでプロデュースし続けている。
またアクティブにスポーツを楽しむユーザーに向け、スキーコレクション、MTBマウンテンバイクコレクション、乗馬コレクションも展開する。

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ダイネーゼ スマートジャケットを作動させてみた|DAINESE SMART JACKET|RIDE HI

協力/ ユーロギア ダイネーゼ&AGVジャパン