トラス構造のピボットレスフレームで1982年から最もベーシックに優れるフォルムを得る!


2009年にリリースされた250ccVツインのVTRは、2017年に生産を終了(2019年までカタログには存在した)するまで、VT250Fのエンジンを何と30年以上も継承した歴史に残るロングランを刻んでいた。
ベースは1997年にトラス構造の新しいピボットレスフレームを得た、VTRと名乗ったネイキッドスポーツに燃料噴射を採用した発展型。
1982年5月にデビューしたホンダVT250Fは、最速を誇った2ストローク250スポーツに、4ストロークで立ち向かうため11,000rpm以上の超高回転を前提に開発したVツイン。
市販車の常識を逸脱した高精度エンジンで、信頼性など心配する声をよそに基本設計の確かさで支持層がどんどん拡がり、一世を風靡する次元の異なるバイクとして大きな存在感となっていた。

それがフルカウルのINTEGRAやボディマウント・ハーフカウルの一体デザインを経て、ネイキッドのVY250Z、さらにインテグレートされたデザインの3代目、そしてツインスパーフレームのネイキッドSPADA、パイプフレームでトラディショナル方向へ戻ったハーフカウルのXELVIS(ゼルビス)と、スーパースポーツからツーリングスポーツやタウンスポーツ的なキャラクターなどまさに七変化といえる展開だった。
それが同じ1997年デビューのVツインスポーツのVTR1000Fで採用した、パイプを3次元構成したトラス構造のフレーム、しかもピボットレスという手法で見た目にもスタイリッシュで時代を反映した新ネイキッドへと生まれ変わったのだ。



V4やVツインで10年以上の経験を積んだホンダは、エンジンの前後長が長いネガティブの払拭と、タイヤのロープロファイル・ワイド化で路面からのストレスも大きくなったことを併せ、要求される強度方向がステアリングヘッドと異なるスイングアームのピボットをメインフレームから分離させる手法を選んだ。
VTRではメインフレームはエンジンマウントとの連結のみ。
そこからプレートを介してスイングアーム・ピボットを設けるという構成。
このためステップまわりのスリム化など、ナロウな車体構成を活かす新世代ライディング・フィールを可能にしたとアピールしていた。

さらにエンジン特性を中低速のレスポンスを向上させ、ミッションも6速から5速へと減じて実用性をアップするという、かつての超高回転高性能マシンでは考えられない大改革を断行したのだった。
そもそもロングランのメリットで、吸気経路の長さや断面にはじまり、カムプロフィールに至るまで熟成を重ね250ccとは思えない中速域を充実させていたが、そうした細かなチューンに加えジェネレーターの慣性マスを12%増やすトルク増大方向へ進化させている。


さらに2009年、排気ガス規制への対応もあってキャブレターを電子制御燃料噴射化、そのPGM-FIも既に大幅な進化を果たしており、吸気のストレート化はもちろんキャブレターでは成し遂げられなかった回転域やスロットル開度の無数の組み合わせ対応で、どんな条件下でも変わらないレスポンスが得られるようになった。
またこれを機に燃料タンクのフォルムをはじめデザインもスリム・コンパクトをアピールするルックスへと変身を遂げたのだ。



とくにシャシー前後のアライメントや重心設定など、さらに運動性と安定感との好バランスを追求、ここまでの世代で最もナチュラルなハンドリングへと熟成されていた。
また前後サスの全長を僅かに短縮、シート形状も微妙な変更を加えたLD(ローダウン)バージョンも追加している。
さらにエンジンをブラックアウト、5色のカラーリングをホイールも黒にしたSTYLE IとゴールドホイールのSTYLE IIの2仕様としたり、2014年7月からハーフカウル装着のVTR-Fも加わるなど、長年生産を継続した機種ならではの余裕を感じさせるラインナップを展開していた。

しかし反面、キャブレター仕様のスロットル・レスポンスを好む層もあって、その後の中古車市場でもニーズは分かれているようだ。
レスポンスの質ではなく、エンジンが応えてくれる感性にこだわるライダーがいて、30年以上も前に開発されていても他のバイクと比較する、そうしたファンを育んだのもホンダならでは。

そして2017年、遂にその生産を終了することとなった。
この間に繰り広げられた進化を振り返ると、まさにスポーツバイクが様々なブームの渦中で、その都度バイクの価値観を変えてきたVT250系の歴史は、まさにバイク史の象徴といえるだろう。



