逞しさ力強さの漂うデザインは、
旧さをまったく感じさせない
ホンダGB500TT 1985年
’80年代のレーサーレプリカが乱舞するバイクブームに、ホンダが投入したGB400/500TT。いうまでもなく英国マン島T.T.レースに由来するブリティッシュ・ビッグシングルのトラディショナル・デザインが衝撃的だった。
当時のマーケットの事情からいえば、パワー競争と新しさだけ競う世相へのアンチテーゼとして、ヤマハSR400/500が牙城を築きはじめていたのに対し、ホンダも対向したカタチだ。
ただ当時リーダーへと復活を果たしたホンダには、ライバルと同じ手法や土俵ではなく、オリジナリティのあるコンセプトで突き進む骨太なマインドがあった。
SRのトラディショナル・デザインが柔和なラインを描いていたのに対し、GBは強さや逞しさをアピール。
しかもそのビッグシングル・エンジンのパワーフィーリングは、トコトコと鼓動を楽しむイメージのSRと異なり、レスポンスの鋭い切れ味を感じさせるハイチューン・シングルの刺激に満ちていたのだ。
ホンダGB400 1985年
オフロードで早くからリードしたホンダの
抜きん出た単気筒パフォーマンス
ホンダGB250 1983年
ホンダGB400 1985年
ホンダXL400R 1982年
ホンダXL600R Pharaoh 1985年
そもそもホンダは1972年のSL250Sに代表される、単気筒オフ系モデルの優秀性は世界が認めるものだった。
そうした豊富な単気筒テクノロジーを転用して、1983年に登場したGB250は幅広い層に、扱いやすさと漂う趣味性で人気を博していた。
その兄貴分にあたるGB400/500も、世界でビッグシングルといえば圧倒的な強みで定評のあったXL系をベースに、砂漠を駆け抜けるファラオの名でいまでいうアドベンチャー系の先駆けとなったXL600RとラジアルバルブRFVC搭載のベースエンジンを共有する、まさにパフォーマンスとしても揺るぎない位置づけにあった。
因みにGB400/500は、エンジン後部のフレーム内にオイルタンクを持つ、オフ系ハイチューン仕様を色濃く伝えていた。
ホンダのビッグシングル・スポーツへの期待は、
新しいGB350とは相容れない感性なのか?
ホンダGB400TT SPECIAL EDITION 1987年
GB250クラブマンは、その汎用性から長く続いたモデルだったが、GB400/500のほうは残念ながら短命に終わった。
その後、東京モーターショーなどで新しいビッグシングル・スポーツの提案はされてきたが、最近ではその兆候も失せてしまっていた。
そこへアジア圏のスポーツバイク・ブームでGB350が誕生、GBの名が復活したもののマン島T.T.をイメージさせるトラディショナル・スポーツの普遍的なデザインの強さはない。
いま見ても旧さをまったく感じさせないGB400/500が放つ趣味性こそ、日本製モーターサイクルがあらためてオリジナリティをアピールするフィールドだと思うのだが。