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このバイクに注目
HONDA
BROS
1987~1990model

ホンダのテイスト路線原点はBROS【このバイクに注目】

パフォーマンス追求ではない、
かといってビンテージでもない、
そんなNewカテゴリーを目指したブロス

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1987年、レプリカブーム盛んな頃とはいえ毎年モデルチェンジするハイエンド・スポーツに辟易としする層が出はじめていた。
ホンダはGB400/500で、マン島TTレースイメージのカテゴリーで一定の層を掴んだが、レプリカブームが去ってからの受け皿でないのはわかっている。

という狭間で生まれたNewコンセプトが52°のVツインを搭載、ツインチューブの最先端フレームテクノロジーに方支持スイングアームを組み合わせた、新しいのに性能を狙わないテイスティなコンセプト。

ホンダはカタログや雑誌広告で、G感というキャッチフレーズを掲げた。
何を意味するのか、Gというエネルギーを暗示する英文字に、究極の性能は求めないけれど軟派ではない硬派なスポーツバイク……そんな空気を漂わせていた。

BROS、ブロスとはBrothers(兄弟)の略。650ccと400ccの2本立てだが、敢えて排気量を車名に使わず、Product OneとProduct Twoと呼ぶことで、従来のバイクの疑念にハメないフィロソフィをアピールしたのだ。

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Product Oneは79×66mmのボア×ストロークで647cc。吸気2バルブで排気1バルブの3バルブ燃焼室は、55ps/7,500rpm、5.7kgm/6,500rpm。
Product Twoは64×62mmのボア×ストロークで398cc、同じく3バルブ燃焼室で37ps/8,500rpm、3.5kgm/6,500rpm。
跨がると頼りないほど燃料タンクがスリムで、ホイールベースが1,430mmとコンパクト、車重は181kgと180kgだった。

ホンダの52°位相Vツインは様々な機種で使われた傑作エンジン

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このBROSの52°Vツイン、実は1983年のNV400SPやNV400Customで使われた新世代Vツイン。
他の常識的な90°や45°のVツインが、2気筒でクランクピン1本を共有するのに対し、各気筒でピン位置を適宜レイアウトできる特異なクランクウェブで、1次振動を打ち消しつつ鼓動に個性を感じる、テイスティなVツインを狙っていたのだ。

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ファンにはこれまでないエンジンと車体や足まわりの組み合わせで、確かに新しい未知のゾーンを感じさせ、峠で膝を擦るライダーたちとは一線を引いた層の注目を集めた。 ただライバルがヤマハSRXといわれ、シングルとVツインをなぜ同じカテゴリーで見るのか?甚だ不明だったが、どこにも属さない新しいスポーツバイクを求めていた、ということだったのだろう。

ところがその走りは軽過ぎたり鋭過ぎたりせず、一定の運動性を保つステディなハンドリングで、パフォーマンス狙いではない機種とはいえ、剛性の高いフレームと相まって、サーキットを走らせるとなかなかの醍醐味で、実は腕の立つライダーには評価が高かったのだ。

硬派を貫けず、52°Vツインは多様な機種に活躍の場が与えられた

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しかし初期の新しいモノ好きなファンに定着すると、ブロスはいきなりニーズがストップ。
硬派を標榜したセパレートハンドルも、ハンドルの高さを一般的なネイキッドバイクと近い位置へ変えるなど、個性が敷居を高めていたのを崩しはじめ、当初の気高さがスポイルされてしまい、ある種の悪循環へハマっていった。

そして1990年モデルで燃料噴射化され、ホイールデザインの変更やラジアルタイヤ装着としたが、結局これが最終モデルとなったのだ。

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しかしこの52°Vツイン、元はオフ系モデルで進化を遂げていたこともあり、一世を風靡したTRANSALPに搭載され、長きにわたり現役エンジンを務めていくことになる。

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オンロードスポーツとしては、アメリカンだけでなく1995年のVRX ROADSTERにもなったが、多くのライダーがその存在さえも気づかないマイノリティ。
Vツインスポーツの難しさを語らせる1台でしかなかった。

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