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1983年の12月、ホンダは400cc直4の前傾ネイキッドスポーツCBR400Fと、ナナハンとしては5年ぶりの直4NewエンジンのCBX750Fをリリースした。
当時のホンダはV型旋風で殴り込みをかけている真っ最中、ホンダ伝統の直4(並列4気筒、インライン4とも呼ぶ)はやや控えめに振る舞う必要があった。
V型は250cc2気筒も400ccや750cc4気筒は水冷、対して直4は空冷とコンサバな構成で新進気鋭なイメージにはなかった。
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しかし初代CB750フォアからCB750Fの第2世代でDOHC4バルブとなって迎えた第3世代に課せられたテーマは、スリム軽量コンパクト。
まずACG(発電ジェネレーター)をクランクシャフト先端ではなく、シリンダー背面で駆動することで思いきりナロウ化、そしてDOHCで16バルブと高度で精緻なメカニズムを油圧タペットという、エンジンオイルを運転中にロッカーを押し上げる位置へ小さなシリンダーを設け油圧で押し続けるタペットのクリアランスを調整する必要のないメインテナンスフリー化、さらにはNR500で培ったエンジンブレーキの過剰な減速を抑えるバックトルクリミッター(現在のスリッパークラッチ)を装備するという、ハイパー最前線ではないポジションとは思えない斬新メカニズムを搭載していたのだ。
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果たしてこのスリムさは、直4のハンドリングを大幅に変えてしまい、750ccというとビッグな貫録バイクではなくコーナリングの醍醐味を楽しむクラスに捉えていた海外では大好評となった。
ただ国内ではカウルが国内向けでも認可されたのに伴い、インテグレートされたフォルムがジェントルなツーリングスポーツを印象づけて、いまひとつ熱いバイクに思われなかったことから注目度は高くなかった。
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その後、CBX750Fはタウンユースを意識したホライゾンや、フルカウルでナナハンながらフラッグシップを感じさせるボルドールが加わったが、国内の気運と海外マーケットとの状況の違いは大きく、その乗りやすさで極めた存在だったにもかかわらず、日本では存在があまり知られていないマイノリティとなってしまったのが残念でならない。