天敵ゼファーをターゲットから外しホンダDNAのスーパースポーツを目指す!

1992年のリリースから、実に30年ものロングセラーを記録した空前のヒット作、ホンダCB400スーパーフォア。
実はこれより前、1989年にホンダはCB-1という斬新なネイキッドスポーツをデビューさせていた。
ワインディングをレプリカに負けない鋭いハンドリングで駆け抜ける……そこにこだわった意欲作で絶対に自信があったのだ。
しかし同じ1989年に登場したカワサキのゼファーが、いわば真逆のノスタルジックなスポーツ性に尖らないコンセプトで大ヒット……テクノロジーを詰め込み緻密なつくりのCB-1が後塵を拝する結果となった。




4気筒エンジンはそもそもホンダの看板、だからこの事態はちょっと許せない。
‘‘直4(直列4 気筒、つまりインライン4)のホンダ“の名誉挽回をスローガンに、開発スタッフ自らがまだホンダに人社する前のひとりの工ンドユーザーだったころ、ホンダ直4のどこに憧れたかを解析、それをこのCB400スーパーフォアの姿かたちに盛り込んでいったという。
そこで得た結論は、スーパースポーツとは本来堂々と身を委ねて乗るもので、さりとて懐古趣味ではなく最新である贅沢さを味わえるようなつくりにしようということになった。
具体的にはCB-1のエンジンをベースに、たとえばクランク慣性マスを70%も増大(クランクウエブで55%、発電ローターで45%)、中低速でギクシャクしない特性へと大変身させ、吸気ポートを33°だったのをマイナス5°も水平に近づけ小径化してレスポンスを乗りやすく扱いやすい特性とした。
さらにCB-1では売りのひとつだったカムギヤトレーンをやめ、一般的なカムチェーン方式として急かされるメカノイズを抑えている。
また車体サイズもホイールベースを長めに、さらに全体のアライメントを街中でわかりやすいハンドリングへと大幅に変更したのだ。



ちょうどその頃、ホンダは大型バイクのネイキッドで、CB1000(愛称BIG1)を開発中で、1981年のCB1100Rにインスパイアされた燃料タンクのデザインを取り込み社内でも好評だったことから、このCB400スーパーフォアにも同じデザインコンセプトを踏襲することとなった。
こうしてまとまった新しいカウルを装着しないスーパースポーツは、多くのホンダファン、とくにビギナーのこれから乗りはじめようという層の注目を集め、ご存じの空前の大ヒットへと大きく開花したのだ。




それまでホンダ4気筒といえば、ひたすらシャープで洗練されたエンジン特性がイメージだったが、このようにまさかのクランク慣性マスを重くして、扱いやすくより幅広い層がエンジンのスポーツ性を楽しめる感性へまとめた変化は大きな変革だった。
しかしこうしたスペック的には尖っていなくても、実質的に乗る人を楽しませる方向へと扉を開いた貢献度ははかり知れない。
ノスタルジーではない原点の見直しは、この後のホンダ製スポーツバイクの展開を大きく塗り替えていくことになった。