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このバイクに注目
Honda
GB350

【GB350 インプレ】狙った穏やかさと従順なハンドリング(プロデューサー/根本 健/72歳)

クラシカルなセミダブルクレードルフレーム、そこには乗りやすさと楽しさを込めたスペックが!

前輪の少し遅れて反応する設定がもたらす安心感、すべてにクイックでない特性は、ビギナーだけでなくエンジョイ派のベテラン好みでもある

空冷の単気筒でトラディショナルなデザイン。雰囲気重視のバイクだから、そもそもローテクだろうと思いがち。
ところがさすがホンダで、この鋭さなど無縁と思える外観からは想像もつかない、最新テクノロジーが駆使されているのだ。
というと、すぐエンジンを思い浮かべると思う。確かにそれもあるのだが、ここではまず車体というかフレームの技術について説明しておこう。

このバイク、燃料タンクに隠れて目立たないのだが、ステアリングヘッドというフロントフォークが装着されている、メーターパネルの下の舵を切る中心軸の位置(ヘッドパイプ)と、エンジンの一番上との間隔が間延びした感じに広いのが特徴的。
そしてエンジンを支えるフレーム下側のマウント位置と、そのヘッドパイプとの距離が長く、リーンをしてから車体が曲がりはじめるまでの、ライダーが馴染みやすいラグ、つまりちょっとだけ遅れる感じを醸し出しているのだ。
遅れると聞くと、どこかスポーティさを欠く印象を与えるかも知れないが、実際には一瞬のラグも感じさせないはず。

ライダーというか、人間の感性は2次曲線的にジワッと増えたり動いたりする特性に馴染みやすい。いきなり予告もなく、バッと押されたり、サッと引かれたりすると咄嗟に反応できたとしても不安になり常に身構えなければならなくなる。
これは1/100秒を争うレースの世界でも同じで、GPマシンもフレームにしなやかさとかサスペンションの動き、そしてエンジンレスポンスにも「ジワッ」と感じさせるよう設定しないと、天才肌でもポテンシャルを発揮できないのだ。

とはいえGB350は前輪が19インチ。’50~’60年代の英国製大型スポーツモデルで流行った、郊外のアベレージで直進安定性に優れ、街中の低速域でフラつきにくい、前輪の追従が穏やかで、バランスに優れたアライメント設定と、典型的なトラディショナルスタイルなのだが、その独得な良さを350クラスでも確実にするため、ビッグバイクのような感性で乗れる絶妙な設計が工夫されている。

ただしなやかといっても、フレームのパイプが応力に対し目で見てわかるほどたわむワケではない。ただガチガチで強固なフレームほど、乗りにくい傾向なのは近年の解析でも明らか。
それを象徴しているひとつが、後輪を支えるスイングアーム。フレームのような丸パイプを使わず角断面と、レースの世界では知られた剛性を縦横でバランスを変えられる、設計に優位な素材だからだ。

エッ、クラシカルな雰囲気バイクのつもりが、そんなにテクノロジーの詰まった最新機種なんだ……驚かれたかも知れないが、ホンダはこうした感性が大事な領域でも、狙いを明確に反映するための技術の注入を惜しまない。

他にも旧くからのファンなら、フロントフォークのインナーチューブφ41mmと聞けば、なるほどビッグバイクのフィーリングを狙ったバイクと納得するに違いない大盤振舞いなのだ。

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セレクタブル トルクコントロール による、安心して後輪が路面を蹴る醍醐味で熱くなれるバイク!

こんなパワーでもトラコン?、スポーツモデルファンなら首を傾げる贅沢仕様がビギナーをバイクの虜にするし、ベテランの青春への回帰を誘う

GB350の試乗リポートその1でもお伝えした、実はバランサーが2カ所だったり、オフセットシリンダーだったりと、トラッドな外観から想像できない最新テクノロジーが注ぎ込まれているのは徐々におわかりいただけたと思う。

その車体に注ぎ込まれた高度なノウハウに続いて、エンジン側でも鼓動やたった6,000rpmでアタマ打ちのレブカットが入る力強いトルクだけではなく、本来はスーパースポーツで装備される贅沢仕様にクラッチ構造も加わる。
軽く切れる手に優しい構造は、エンジンが回転を上げるとガッチリ滑りにくくなる仕組みから得られているメリットで、さらに無茶なシフトダウンで後輪がキュッとならないようスリップさせる仕組みもある、アシスト機構とスリッパー機構を備えているのだ。
知識のあるライダーなら、なぜスーパーバイクのメカニズムを?と呆れているかも知れない。

だとしたら、その呆れる究極が、セレクタブル トルクコントロール。いわゆるトラコンの一種が装備されているのだ。
20ps……雨でウエット路面にでもならないかぎり、エンジンパワーで空転などまずあり得ない、そう思うのがフツーだろう。ということも含め、一般のトラコンとはやや違う仕様でキャンセルもできる。
ただ試乗して、相応なアベレージで走るとわかるのは、後輪からの路面を蹴っているフィーリングのフィードバックが明解で、それがコーナリングやちょっとした曲がり角からの立ち上がり加速だと、グイグイと曲がれる醍醐味が味わえる楽しさ。
慣れてくるとビギナーでもガバッと開けるだろうし、ましてや昔そこそこ醍醐味を経験したことのあるキャリアのリターンライダーなら、思わずお尻で感じるトラクションにニヤニヤせずにいられないはず。
そうした乗り方へ誘うのも、フェイルセイフが機能する安心感があってこそだ。

いまやABS(アンチロックブレーキシステム)と変わらずスポーツバイクに装備されているトラコンも、このクラスでは「バイクの醍醐味、面白さ」を知ってもらうツールとして大切な役割があるのを、今回あらためて思い知った次第。

これからミッション付きのスポーツバイクに乗ろうとするなら、そして季節もイイし昔のようにワクワクしたいと思っているリターン派にも、乗ってからの面白みの深いGB350はお薦めの筆頭だろう。

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SPEC

Specifications
Honda GB350
エンジン
空冷4ストロークOHC単気筒
総排気量
348cc
ボア×ストローク
70×90.5mm
圧縮比
9.5対1
最高出力
15kW 20ps/5,500rpm
最大トルク
29Nm/3,000rpm
変速機
5速
フレーム
セミダブルクレードル
車両重量
180kg
キャスター/トレール
27.30'/120mm
サスペンション
F=テレスコピック
R=スイングアーム+ツインショック
タイヤサイズ
F=100/90-19 R=130/70-18
全長/全幅/全高
2,180/800/1,105mm
軸間距離
1,440mm
価格
55万円
協力/ 本田技研工業