ST600など“レースの登竜門”に位置付けられたミドルスーパースポーツ。しかし熟成と共に、特化された存在になりつつある感も否めない。そんな停滞した空気を吹き飛ばすかのように復活したCBR600RR。その存在意義を、原田哲也が走って紐解く
帰ってきたミドルスーパースポーツ「600ならカッチリ開けて楽しめる」
2016年に生産を終了して4年余り、ホンダのミドルスーパースポーツ「CBR600RR」がついに復活。エンジンやシャシーなどの基本構成は先代モデルを踏襲するが、隅々まで見直して熟成を図ったうえに、最新の電子デバイスが満載。このクラスでは初のウイングレットも装備した。
「今回は路面がドライじゃないのでフルパワーまで使っていませんが、“難しさ”を感じさせないところが、最大のメリットでしょう」と原田さん。試乗した袖ケ浦フォレストレースウェイは、昨夜から降り続いた雨でハーフウエットの状態だ。
「パワーセレクターやトルクコントロールなど電子デバイスを新たに装備したのでスロットルを開けやすい、とも言えますが……。だけど1,000ccスーパースポーツはこれらのデバイスはすでに装備していますよね。それでも濡れた路面ではやっぱり開けるのを躊躇する。でも600は“カチッ”と最後まで開けられます。
これはパワー差もありますが、車格も影響しています。1,000ccより小さくて軽い、当たり前のことですが、これが“操作している感”を高めてくれるのです。またサスペンションは雨でも良く動くし、オプションのクイックシフターもしっかり機能。こういうところも難しさを感じさせない大事な要素でしょう」
せっかくならサーキットも走ってみてほしい!
「やはりスポーツ走行を楽しむためのバイクですから、活躍の場はサーキットですね。たとえばいままで250cc、400ccクラスに乗っていて“大型免許を取ったし、そろそろサーキットデビューしたいな”と考えている人にオススメしたい。
もちろん“せっかくなら1,000cc”という気持ちもわかるし、SBKやMotoGPのイメージが強い1,000ccスーパースポーツは大きな魅力がありますが、もし自分のバイクライフに時間的な余裕があるのなら、1,000ccの前にミドルクラスに乗っておいて絶対に損はありません。600ccに乗ってからの方が1,000ccをもっと楽しめますよ。
また、今回のようにコンディションが悪くても機能を使って楽しめるバイクですから、状況の厳しい公道ツーリングでも、600ccスーパースポーツならではのメリットを感じられるはず。それに車格はコンパクトですがポジションには自由度がありますから、かなり“使える”バイクだと思います」
ライディングの満足度を高める電子デバイスが満載
スロットルバイワイヤやIMUの採用で緻密な制御を実現し、5段階のパワーセレクターやトラクションコントロール、ウイリーコントロール、エンジンブレーキコントロールの4項目を統合制御するライディングモードを搭載。メーターはTFTカラー液晶
フロントはSHOWAのBPF、リヤはユニットプロリンクを装備。ボッシュ製の5軸IMUを用いたスーパースポーツ専用ABSを採用
車格が小さく軽いという当然の事実が、条件が厳しい時ほどメリットになる。“操っている感”の大きさがバイクライフを豊かにする
オプションでアップ/ダウン対応のクイックシフターを用意。ペダル操作の荷重やストローク量、タイミングを3段階で調整可能
ウイングレットを装備し、いま風のルックスになって復活したCBR600RR
SPEC
- 最大トルク
- 64Nm(6.5kgf・m)/11,500rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- アルミツインスパー
- 車両重量
- 194kg
- ブレーキ
- F=φ310mmダブル R=φ220mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
- シート高
- 820mm
- 燃料タンク容量
- 18L
- 価格
- 160万6,000円