僕の愛車はヤマハSR。今は1978年式と2010年式のインジェクション仕様の2台を所有。単気筒(シングルエンジン)が大好きで、27年間 SRに乗り続けてきた。過去にはSRで2VS(2バルブシングル)レーサーを制作したり、公道もサーキットもひたすらSR。何台買ったか覚えていないし、エンジンも何度組み直したか覚えていないほど様々なチューニングをしてきた。
ビッグシングルはなかなか流行らない……。
単気筒エンジンを搭載したスポーツモデルであるヤマハ・SRXやホンダ・GB、スズキ・グースといったバイクが一瞬輝いた時期はあるが、今は絶版。現在、普通に新車で買えるビッグシングルはハスクバーナのビットピレンとスパルトピレンだけだ。
SRにもファイナルエディションの噂が囁かれるようになり、ついにモダンシングルが消える……そんな危機を感じていたところにホンダがやってくれた。それがハイネスCB350だ。
排気量的にはビッグシングルではない。でも、そのスペックを見てからワクワクする気持ちが止まらないのだ。このスペックを採用したホンダは凄い! 本当にそう思う。
ヤマハSR400
1978年に登場した超ロングセラーバイク。始動はキックのみ。以前は500もラインナップしていた。基本的な構造を変えず、厳しい規制をクリアしてきたが……
まずは国産主要単気筒のスペックを見てみよう。
- SR400 399cc 87×67.2mm 24ps/6,500rpm
- SR500 499cc 87×84mm 32ps/6,500rpm
- ハイネスCB350 348cc 70×90.5mm 21ps/5,500rpm
- エストレヤ 249cc 66×73mm 18ps/7,500rpm
注目すべきはストロークで、ハイネスCB350はSR500よりもストロークが長いのである! これはかなりの衝撃である。
SRをチューンしてロングストローク化(92mm)したバイクに何度も乗ったが、これがたまらなく良い。5速/2,000rpmでワインディングを走れる粘りがあり、乗るほどにもっと遠くへ行きたい気持ちになるエンジンなのだ。
エストレヤもそう。250ccクラスはパワーを出すためにショートストローク化してしまうことが大半だが、ロングストロークだとパワーよりも鼓動感が際立つ。正直、エストレヤのデビュー時はその魅力がわからなかった。でも僕自身が歳を重ねいろいろなバイクに乗るほどにエストレヤのキャラクター(ロングストローク)に惹かれていった。
カワサキ エストレヤ
’92年にデビューし、’18年まで生産された。クラシカルな佇まいに合わせてエンジンはロングストローク。排気量を忘れさせる粘り強いトルクが魅力だった
ハイネスCB350の超ロングストローク! な乗り味を想像してみよう
アイドリングからスロットルを開けた瞬間、単気筒らしい鼓動感を感じられるだろう。街中でもすぐに高いギヤまでシフトアップして、常用するのは2,000〜5,000rpm。そしてどのギヤでも回転を上げていくほどに身体に柔らかいトルクが響くはずだ。
ワインディングもトップギア(5速)のまま、スロットルワークだけで2,000〜4,000rpmを使いながらトコトコと走れるに違いない。しかもスロットルを開けるたびにこのロングストロークの力強い鼓動が全身に伝わるのだ。
フロント19インチ、リヤ18インチの細いバイアスタイヤが生み出すハンドリングは軽快で、どこにも難しさを感じさせないはず。僕はSRもフロント19インチ、リヤ18インチ(ノーマルは前後18インチ)にしているが、市街地でもワイディングでもとにかく走っているというか操っている実感が高く、満足感が高いのだ。
パワーやトルクの数値は確かに高くはない。しかし、クランクの慣性モーメントがあるためその乗り味を知れば、そんな数値はどうでも良いと思わせてくれる心地良さを味わえる。
だから走るほどに「遠くへ行きたい」「もっと走りたい」そんな気持ちにさせてくれるに違いない。
その走りを妄想するだけでワクワクできるし、ハイネスCB350で単気筒の面白さに気がついてくれる人が増えると思うと、単気筒フリークとしてはそれだけで嬉しい。
超ロングストローク! なハイネスCB350の登場を心待ちにしたい。