東京モーターショーのコンセプトモデルは、お飾りではなく開発途上の姿だった!
モーターショーに参考出品されるショーモデルは、近々発売されるNewモデルのプロトタイプの場合から、遠い将来を見据えて考え方を見せる実際に走ってはいないカタチだけのケースまで様々。
たとえば第42回東京モーターショーで、ホンダは次世代電動モビリティー 7モデルを出展と謳い、コンセプトモデルを並べて見せた。
それらはひと目で、中に電動モーターも入っていないカタチだけとわかるものばかり。
バイクもモトコンポやキャノピーが電動化されたらこういうデザインが"かわいい"と提案しているように映る。
そこへ最後に並んだRC-Eと名付けたモデルも、'60年代に世界GPを席巻したRCシリーズのカラーリングを纏い、電動でもスーパースポーツを考えてます……としかファンには伝わってこなかった。
ところがこのRC-E、後からよくよく見ると、8年後にスタートしたMotoEのマシンと既に同じような仕組みだった。
RCワークスマシンカラーの意味するのは、夢のマシンではなく具体的に進めている意気込みの証しでもあったのだ。
電動マシンの心臓部、モーターと駆動ユニットの型式やバッテリースペースをフレーム部分に占める、8年後にスタートしたMotoEの姿そのもの!
実はこの2011年から12年後の2023年、ホンダから出願された特許申請に、まさしくこのRC-Eと認識できる図版があった。
カウルの姿はもとより、通常のバイクの燃料タンクにあたる形状から、モーター部分やスイングアームの形状まで、明確にRC-Eなのは間違いない線画だ。
興味深いのはバッテリーを包むボディ部分が、通常のタンク部分とエンジン部分、そしてアンダーカウル部分の3つで構成されていて、薄型のモーターとスイングアームのピボットを同軸とするスリムでコンパクトな構成となっていること。
それは2019年からスタートしたMotoEの構成にかぎりなく近い。
つまりホンダは2011年、具体的な開発途上にあったプロトタイプを展示していたのだ。
注目したいのはMotoEが実際に知られるようになって出てきた、バッテリー部分の冷却の問題などの解決のため、前輪直後のカウル下側の部分で冷却風の工夫がされているのを確認できること。
当時は開発当事者でなければ知る由もなく、ジャーナリストにはRC-Eが如何に具体的な開発途上にあったかを理解できなかった。
これはホンダがMotoEを目指していたか否かを立証するものではない。
ただEV化でもスーパースポーツのようなパフォーマンス・マシンを目指そうとすると、この構成になったのを示したホンダの先進性を伺い知ることができる。
将来EV化にスーパースポーツが存在するのか、それを見通せる時期はまだ遠そうだ……
2011年のリリースでは、全長:2,010mm、全幅:625mm、全高:1,120mmのスペックが示されていた。
イメージとしては250ccのコンパクトな車体ボリューム。
外観でグリーン地のゼッケンとなっているのも、1970 年代まで続いた世界GPのクラス分けを示したものだ。
そうした親しみやすく扱いやすい車格で、電動であれば250ccエンジンでは低い回転域で非力な部分を、ビッグバイクのような力強さを併せ持つことも可能になる。
ホンダがそこを目指していたのは、リリースからも明確だった。
しかし航続距離を左右するバッテリー容量と重さの問題が、現実的にリッターバイク並みかそれ以上となってしまうのは、最新MotoEマシンや実用化されたEVスーパースポーツをみても明らかだ。
これを解決できる新しい要素が出現しないかぎり、バイクの分野でEV化はコミューターの域を出ない……ホンダがいま海外で急ピッチに進めているEVバイクからはそう伝わってくる。
しかし日本のスポーツバイクファンとして、EVスーパースポーツ開発でホンダが世界に先駆けた位置にいたのを知ることができたのは何よりだ。