kawasaki_ar50_20241229_main.jpg
このバイクに注目
KAWASAKI
AR50
1981~1988model

カワサキ初のゼロハンスポーツAR50!【このバイクに注目】

Photos:
KAWASAKI

遂に50ccクラスへ足がかりをつくる!

kawasaki_ar50_20241229_01

1980年にドイツのIFMA(ケルンショー)で、カワサキがAR50/80とオフロード車のAE50/80を発表したとき、世界のバイクメーカーに衝撃が走った。
なぜなら、カワサキは1961年に50ccモペッド生産に手を染めたことがあったものの、その後は125cc以上で250~350、そして500ccからZ1の900ccへとビッグバイクのメーカーとなり、日本の3メーカーと違ってスクーターなどビジネス系の小型バイク市場へ参入してこなかったからだ。
ご覧の1961年当時の写真は、50ccのペットM5と125ccというB7のビジネスバイク。後ろはベル47G型で川崎航空機がライセンス生産していたヘリコプター。戦前からの飛行機メーカーだった成り立ちを世間へ伝えようとしていた時代だった。

kawasaki_ar50_20241229_02
kawasaki_ar50_20241229_03

そのカワサキがZ1をはじめ大型の4スト4気筒で成功を収めてから、2ストでもKR250/350で4度の世界チャンピオンに輝くなど、マーケットボリュームの大きな中型スポーツへも積極的な展開をみせ、瞬く間に互角に張り合う存在となった。
しかし50ccとなると、次元は異なる。生産台数も2ケタほど違い、そこへ進出する足がかりとして先ずは50ccスポーツでアピール! 3メーカーが戦々恐々としていたのもムリはなかった。

kawasaki_ar50_20241229_04
kawasaki_ar50_20241229_05
kawasaki_ar50_20241229_06

50cc、いわゆるゼロハンのカテゴリーにもスポーツバイクはあった。
時代はレーサーレプリカが流行り、一般公道が制限速度30km/hであろうと3ケタのスピードでサーキットを疾駆するイメージの先鋭的な仕様揃い。
そこへ参入してきたカワサキは、空冷ピストンバルブの39.0mm×41.6mmで49cc、7.2ps/9,000rpm、0.62kgm/8,000rpm……いきなりトップパフォーマンスと車重が乾燥で僅か72kg。
しかも中型並みの誰の目から見ても本格派のセミダブルクレードルのフレーム、そして決定的なのがGPマシンやZ系でもスーパースポーツで採用する、ユニトラックという高度なフローティング・サスペンションを装備していたのだ。

kawasaki_ar50_20241229_07
kawasaki_ar50_20241229_08
kawasaki_ar50_20241229_09

このまさかの50ccスポーツにGPマシンの足まわりは、50ccの走りの常識を打ち破っていた。
ステップが接地するような深いバンク角で、バネレートを2次曲線的に高い荷重まで応える設定ながら、低い荷重域でもたっぷりとしたストロークで微細な路面の不整にも追従する高度なユニトラックが、実際に功を奏してコーナーを駆け巡るポテンシャルに驚き驚喜したのは忘れられない。

kawasaki_ar50_20241229_10
kawasaki_ar50_20241229_11
kawasaki_ar50_20241229_12

80ccのタンデムができる仕様も併売され、1981年のデビュー以降いくつかのカラーバリエーションに、カウルを装着したSも加わり、その後に規制対応や仕様変更したAR50-IIと1988年までカタログを賑わしていた。
ただカワサキは、50ccでスクーターなどを生産する規模までバイクメーカーとして手を拡げることはしない決断を下し、マイノリティでファン好みの個性的なスポーツバイクを開発・生産するフィロソフィを貫いてきている。