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このバイクに注目
YAMAHA
TDR250
1988model

40年も前にアドベンチャー系に2スト2気筒250の新構想を展開したTDR250!【このバイクに注目】

エジプトのファラオラリーでテネレが切り開いた砂漠走破を2スト250レプリカエンジンが成し遂げた!

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1987年の東京モーターショーに、ヤマハはファンの意表をつくモデルを発表した。直前にエジプトの砂漠を4,800kmも駆け抜けるファラオラリーで、250ccのクラス優勝を遂げた初見参のマシンが発売になったからだ。
'80年代になると、パリダカールが世界で注目を浴びるようになり、ラリーレイドマシンが続出した。
但し主力はビッグシングル、もしくはビッグツインと、キャリアを積んだスゴ腕ライダーでなければ乗れそうにない世界観。
ところがこのサバイバルなキャラクターを、ツーリングの「旅」とイメージをオーバーラップさせたアドバンチャ-系という新カテゴリーが誕生したのだ。

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ヨーロッパを発信源に、BMWのGSシリーズはアメリカでもツーリングバイクの常識を引っ繰り返しはじめた。
日本ではヤマハがこのTDR250で新「旅バイク」構造を目論んだ。
曰く「北海道ツーリング」をキーワードに仕上げていったという。
真っ直ぐな道の多い彼の地で、舗装路をちょっと外れ大地を踏みしめる冒険旅へ誘う新境地のバイク……。

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そして人々を驚かせたのがそのエンジン。
何と当時のレプリカ最前線マシン、TZR250の最新水冷クランクリードバルブの2気筒を搭載、45ps/9,500rpmとクラス最強のままデジタルで点火の進角や可変排気ポートを制御するハイテク化も加え、専用のダブルクレードル・フレームへ搭載したのだ。
極めつけはクロスチャンバーと呼ぶエキゾーストが前方で交叉して管長を稼ぎながらセンターアップ配置として、グランドクリアランスを稼ぐ見た目にもローヅスポーツとは明確に一線を画すレイアウト。
これは多くのファンの目を釘づけにした。
前18インチに後17インチのホイール、ガス圧を加えたドカルボン・タイプのリヤサスと装備もハイエンド揃い。
TZRエンジンのため、ミッションはドライサンプと高度なメカニズムだったり、マスターシリンダーとブレーキホース間にバルブ機構を設けたバリアブルタッチシステムを採用のブレーキなど、オンロードとオフロードともデリケートな操作を可能にした配慮など、いかにもヤマハらしい考えに満ち溢れていた。
燃料タンク側にセットしたタコメーターの配置など、アドベンチャー系の新世界をアピールしていたのだ。

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ただオフロード専用のイメージが強く、ツーリングバイクとしての懐の広さが評価された現代のアドベンチャー系のコンセプトが浸透するまでには至らなかった。
こうしてTDR250は国内向けとしては短命に終わったが、ヨーロッパではミドルクラスで希少な2ストローク2気筒のビッグマシンを追い回す活気ある走りが評価され、グラフィックをラリーレイドのイメージよりツーリングスポーツ的なグラフィックへ変更した1990年モデルが存在していた。
直近のスタイルだけのスクランブラーと称する趣味性が皆無のカテゴリーとは比較にならないが、サバイバルな「夢」を追う旅バイクの提案として、こうしたチャレンジに期待する層は少なくないと思う。