トラッドなネイキッド・スポーツに空冷Vツインが必要とイタリアヤマハが企画開発!

2002年、イタリアのヤマハから企画・開発、そして生産もイタリア独自で進めたBT1100 Bulldogと名づけられた空冷Vツインのトラッド・スポーツがリリースされた。
イタリアのヤマハといえば、1995年に日本国内ではリリースされなかったSZR660というシングル・スポーツを、同じように企画・開発・生産を手がけた実績がある。 ヨーロッパのマーケットはお国柄でニーズも異なるため、日本でワールドワイドに企画した機種ではカバー仕切れないジャンルも出てくる。 とくに日本では流行った4気筒ネイキッドは、海外だと4気筒ならハイスピードのパフォーマンスバイクでしかイメージされず、大型クラスでトラディショナルなバイクとなると日本車には選択肢がない状態。 そんな背景からイタリア・ヤマハは1998年にデビューした空冷1100ccの75°Vツイン、XVS1100 Dragstarに目をつけたのだった


こうして誕生したBT1100は、Bulldog(ブルドッグ)の車名を与えられ、Dragstarと同じシャフト駆動の仕様そのままに、穏やかな乗り味を前提とした75°Vツインの鼓動やビッグトルクを継承する、スポーツ性は敢えて抑えたキャラクターにまとめられていた。
1,063ccの75°Vツインは47.8kW(65.0PS)/5,500rpmで最大トルクが88.2Nm(8.99kgfm)/4,500rpm、車重はシャフトドライブもあって250kgとズッシリ感があるスペックとなっている。
これより前、1999年にヤマハは東京モーターショーでXV1600 Road Star Warriorに搭載する1,600ccの空冷48°VツインのMT-01のコンセプト・モデルを展示。
同じ空冷Vツインでも、巨大なエンジンの塊に跨がる1,600ccのモンスターバイクと、刺激はなくともゆっくりとビッグツインを楽しむBT1100ではキャラクターはまるで異なる。 しかしBT1100のほうを後から見たファンには、いずれデビューするだろう1,600ccが気になって当然だが、そのMT01がリリースされたのはかなり経ってからの2005年。 そうした事情も絡んで、BT1100は発売からの注目度合いが低く、期待された新たなニーズ喚起には結びつきにくかった。
Bulldogは元のDragstarがサイズも大きなクルーザーで、BT1100の見た目にはバランスがとれたフォルムも、実際に跨がるとイメージより遥かに大柄な印象を与えたのも、いまひとつ人気が伸びなかった要因だったようだ。
そうした状況に、カラーリングやテールデザインの変更など、2004年にマイナーチェンジされ、日本へも並行輸入で入荷はあったものの数量的には限られていた。 折りしも厳しくなる排気ガス規制を契機にイタリアでは2007年に生産を終了、日本でも輸入は2008年を最後に販売終了することとなった。

開発のタイミングもあって、ヤマハのMTシリーズに名を連ねるモデルとはならなかったが、イタリア・ヤマハが掴んでいた強過ぎない個性で穏やかに乗れるビッグVツイン・ネイキッドのニーズは、このフォルムを眺めているとこれからのほうがむしろ必要なのかも知れないとあらためて思わせる。