ER-6nリリースで欧米600クラス主導権を握ったKawasaki!
1990年代にヨーロッパからアメリカまで、600ccから700cc超えまでのミドルクラスの需要が高まってきたのと、排気ガス規制や免許や保険などで出力規制への対応を兼ね、カワサキはそれまでのGPz500やER-5の500ccツイン系の後継として全く新しいER-6系統を開発、2006年モデルとしてリリースした。
このエンジンから車体、そしてデザインに至るすべてを、ツーリングからタウンユースまでニーズが変わりつつあった気運をカワサキはこのER-6系でうまく掌握、一大ヒットとなったのだ。
DOHC8バルブのパラレルツインは、ミッションのクラッチに繋がるカウンター軸と駆動に繋がるドライブ軸とをクランクから一直線に並べず、三角形に構成して前後長を詰め新時代のコンパクトな構成としていた。
83×60mmのボア×ストロークで649cc、最大出力を72.1PS と最大トルク6.7kgmの勢いと扱いやすい力強さを感じさせるチューンで、4気筒にヒケをとらないグレード感から評価も高かった。
そしてインパクトだったのがリヤサス。右の横へ深くストロークするほどプログレッシブなバネレートが得られる傾斜角でマウント、この割り切った配置から前後長の短いエンジンとホイールベースがショートな設定でも、旋回性と安定性を両立できる、それまでのミドルクラスを凌駕したハンドリングで、ツーリング好きなファンの心をガッチリと掴んだのだ。
またミドルクラスでも高速道路で長距離移動するニーズからカウル付きを望む層も多かったので、ER-6fを用意したもののこの系統では圧倒的にネイキッドの人気が高く、意外なほど注目度の低い存在だった。
カウル装着のER-6fを常に上回る人気のネイキッドの熟成進化!
好評のER-6nもスズキのVストロームがやはりツーリング好きファンの獲得に積極的なため、ライバルへの対抗で2009年モデルでデザイン変更やエンジンのブラックアウト化などマイナーチェンジとなり、メーター表示がスピード表示をアナログで回転計をデジタル表示と、それまと逆に入れ替えてきた。
カウル装着のER-6fのほうも、同様にデザイン変更をうけている。
そしてミドルクラスの競争が激化してきたのをうけ、ER-6nはメインフレームのパイプ構成をダブルとしたりスイングアームも同様の構成でガルタイプへ変更、シートを前後でセパレート化して全体のデザインも刷新したほぼフルモデルチェンジを実施した。
カウル付きのER-6fもNinjaのロゴも入りモデルチェンジ、スポーツ度の高いジャンルとの棲み分けが曖昧になりつつあったのは否めない。
そして2015年の最終モデルで、ER-6nはZ650へとバトンタッチされることとなった。
国内向けには遅れること2011年から400cc版のER-4nをリリースしたが、国内市場はどうしても4気筒がクラストップに位置する、世界の他の国にはない事情から、ツインのイメージが高まらないままに過ぎてしまった。
人気のマーケットで鍛えられたER-6nのようなモデルこそ、いまの国内ニーズに最も合致したコンセプトに思えるのだが……。