kawasaki_kr250_20251226_main.jpg
このバイクに注目
KAWASAKI
KR250
1984~1985model

KR250は前後(タンデム)に気筒を繋ぐカワサキしか発想しない特異な2スト・レプリカ!【このバイクに注目】

Photos:
KAWASAKI

世界チャンピオンの前後2気筒を後ろ気筒で嵩上げして前後長を短縮!

kawasaki_kr250_20251226_01

1984年、カワサキは初の2スト250レプリカとなるKR250をリリース。
それは1970年代後半に世界GPでタイトルを獲得した、KR250/350ワークスマシンに倣ったタンデムツイン、単気筒を前後に連結した特異なエンジン・レイアウトを採用していた。

kawasaki_kr250_20251226_02
kawasaki_kr250_20251226_03

4度の世界チャンピオンに輝いたKR250/350は、ロータリーバルブという吸気タイミングに切り欠きを入れた円盤がクランクケース横の吸気ポートを開閉しながら回転する、かつて2ストのGPマシンがすべて採用していた方式を採用、ただ一般的な横に2気筒の並列ツインだとロータリーバルブのため両側にキャブレターが飛び出しエンジン幅が大きくなるため単気筒並みにスリムな構成を狙い、各気筒を前後に連結して単気筒の軽快さと前面投影面積の縮小を狙った異例なマシンだった。

kawasaki_kr250_20251226_04
kawasaki_kr250_20251226_05
kawasaki_kr250_20251226_06
kawasaki_kr250_20251226_07

しかしGPマシンと違って前後連結ではエンジンが前後に長く、ライバルの2スト250レプリカの鋭く軽快な運動性の妨げになる。
そこで開発陣はタンデムツインのエンジン前後長を縮める狙いも兼ね、シリンダー面を33°前傾して真ん中にあるクラッチのハウジング・ギヤでふたつの気筒を連結するレイアウトを採用。
GPマシンでは360°位相でお互いが逆回転する同爆設定で、強い脈動パルスで路面を掴むように蹴るコーナーからの立ち上がり加速最優先のマシンだった。
しかし性能本意のレプリカといえど、市販車の快適さは担保しないわけにはゆかず、ギヤ連結したクランク位相は180°で1次振動は物理的に打ち消される原理。
キャブレターは15°傾斜してマウント、当時の最新フラットバルブをさらに15°傾斜させているため、吸気のダウンドラフト化も得る独自の構成とした。
さらにロータリーバルブ吸気の円盤ホルダーには、メインの吸気ポート両側に高回転時のみ開くリードバルブを介したポートを設けたR.R.I.S.と、シンプルな2ストロークにあってメカニカルな構成部分の多さが目立つ、独創のエンジンとなっていた。
パフォーマンスは、ボア×ストロークが56mm×50.6mmの249cc、45ps/10,000rpm、3.7kgm/8,000rpmで、アルミ3ピースフレームなど乾燥重量133kgの超軽量と、ホイールベース1,360mmのコンパクトさ、そして何より異彩を放つほどのスリムさを誇った。

kawasaki_kr250_20251226_08
kawasaki_kr250_20251226_09
kawasaki_kr250_20251226_10
kawasaki_kr250_20251226_11
kawasaki_kr250_20251226_12
kawasaki_kr250_20251226_13
kawasaki_kr250_20251226_14

この他に例のないオリジナリティの塊りだらけのタンデムツインKR250は、フルスロットルで発進すると軽々と前輪が宙に浮くウイリーマシンとして瞬く間に知れ渡り、カワサキらしいと評判にもなったが、その強烈なコントラストで中速以下に力強さがないといったイメージをもたれてしまった。

kawasaki_kr250_20251226_15

これを解決したのがマイナーチェンジされたKR250Sに装備されたKVSSと呼ばれる排気デバイス。
他メーカーが揃って排気ポートの高さを可変とした仕組みだったのに対し、カワサキは2気筒のエキゾーストを連結、180°位相でお互いのチャンバー内に溜まる排気圧を利用して中速域以下の吸気吹き抜けを抑える効果を投入、2,000~6,500rpmの範囲を超える高回転域になると連結していたバルブが閉じ、各々の独立した排気圧での行程となるデバイスだ。

kawasaki_kr250_20251226_16

KR250はデビュー時から足回りもビッグマシン並みの贅沢な装備で、フロントフォークのノーズダイブを押えるAVDS減衰機構から、リヤサスはエンジン形状やフレームレイアウトの関係でエンジン下へベルクランクのリンクを介したユニトラックを採用、サスペンションの調整を外部からダイアルでリモートできる豪華仕様としていた。
またカウルの前部両側にボルト・マウントされているカバーは、ハンドルをクリップオンのレーシングマシン仕様とする場合に備えた仕様。ほぼ外すライダーはいなかったが、他メーカーでは考えもつかないカワサキらしいフィロソフィといえる。
かくして2ストロークマシンとしては、メカニズムも凝った独創性に満ちたマシンだったが、実際のレースシーンで見られなかったこともあり人気はいまひとつ。
その後にレースへ参戦するプロジェクトとして、並列ツインのKR-1や逆VツインのワークスマシンX-09開発へと進化、独創のタンデムツインは短命に終わってしまった。