スポーツツアラーを主要機種に謳ったのはカワサキだけ!

カワサキは、Ninjaのネーミングで一世を風靡したGPZ900Rでもわかるように、そのパフォーマンスで頂点を狙いつつ、デザインやキャラクターに他のメーカーとは明確に異なる個性を大切にしてきた。
このコンセプトでフラッグシップはGPZ1000RX、ZX-10と繋ぎ、1990年にはZZR1100が圧倒的なボリューム感とグラマラスな曲面で、その存在感はひと際ライバルより抜きん出ていた。
ZZR1100は、レーサーレプリカがどんなに流行ろうと、スーパーフラッグシップとしてのフォルムに揺るぎはなく、ダブルズィーアールの名は君臨するイメージでカワサキのプライドそのものとして定着していった。
いっぽう日本国内では、レーサーレプリカの台頭が凄まじく、スポーツバイクといえばレーシーなモデルしか選択肢にないかのような状況で、カワサキはここへ世界で築いた独自の世界を展開することとしたのだ。


輸出用のZZR600Rとペアの開発で、そのコンセプトからZX-4のサイドカムチェーンでレーシーなコンパクト化の流れには手を出さず、基本はGPZ400Rをベースに構築、全体にやや大きめの車格でミドルクラスのフラッグシップを意識させるつくりだ。
エンジンは完全新設計のボア57.5mm×ストローク38.5mmで399ccと、かなりのショートストローク化で醍醐味あるスーパースポーツとしての高回転域を狙い、実用域を8.4リットルの大容量エアクリーナーからCVKD30のダウンドラフトキャブでストレート吸気による効率アップをはかり、排気系は1番と4番、2番と3番のエキゾーストをエンジンの前側で連結、さらにオイルパン直下で1本へ集合、それからふたつのサイレンサーへ振り分ける排気干渉を利用した取り回しだ。
クランクシャフトをGPZ400R世代のハイボチェーン駆動でのパワー取り出しではなく、クランクウェブにギヤを刻む6点支持も耐久性を高めた構成。
バルブ挟み角もIN側15°、EX側でも15°とコンパクトなヘッドまわりで、何と4,000rpmで最大トルクの約80パーセントを発生する力強いエンジンに仕上げている。
最高出力は58PS/12,000rpm、最大トルクが3.7kgm/10,000rpmをスペック表示する。

フレームはGPZ以来のALCROSS(AL-X)で、アルミ製ツインチューブをベースに、エンジンを取り囲むクロスパイプをさらに進化したダイヤモンド形式で構成、エンジン前側をラバーマウントとしながら、高剛性と軽量化の両立をはかっている。
スイングアームは80mm×35mmのアルミ押出材で構成、ピボットシャフトも太めでニードルベアリングを採用する大型バイク並みの仕様。
ホイールベースは旋回性を意識して1,440mmと短めだが、全体の車格はツアラーとしての安定感や疲労軽減を狙ったややボリュームのあるZZ-Rの一員であるのをアピールしたフォルムに収める。
またリヤシート両側にポップアップ式のバンジーフックを装備、カウル前方の左へキー付き小物入れを設けるなど、紛れもなくスポーツツアラーを意図しているのが伝わってくる。


こうしてリリースされたZZ-R400は、1993年にZZ-R1100と同様の前方から走行風にラム圧が加わりエアクリーナーへ送られるエアスクープがライト下になり、全体のフォルムがよりビッグバイク的な曲線を帯びて、いわゆるZZR(ダブルズィーアール)艦隊らしいフェイスリフトをうけ、さらに魅力を放つようになった。


欧米と異なり日本でのツーリングは距離も短く、ツーリングモデルとして特化した機能や快適性などが求められていない。
そうした環境の違いは、スーパースポーツやレプリカでもツーリングに不便を感じさせず、旅バイクが普及しにくい状況が続いていた。
しかしZZR400のZZR1100譲りの風格と、実際にツーリングしてみると疲れ知らずで安心できるハンドリングなど、その人気が徐々に定着していくことになった。
これは他メーカーではあり得ない現象で、カワサキのブランド力の強みをZZR400によってあらためて意識させられたのだった。


その後も最終の2007年モデルまで数々の細かな改良が施され、1997年にメーターへデジタル時計が追加されたり、2001年には排出ガス浄化システム「KLEEN」を搭載、2004年にフロントブレーキのディスクに開いた穴を放射状から波形状配置とするなど、変更点はあれど基本を全く変えずにロングラン・モデルとなった。
それから最終の2007年モデルまで、1997年にメーターへデジタル時計が追加されたり、2001年には排出ガス浄化システム「KLEEN」を搭載したり、2004年にフロントブレーキのディスクに開いた穴を放射状から波形状配置とするなど、細かな変更点は因みに1993年、ZZ-R400はZZR400へとハイフンを抜いた表記へと統一されている。


カワサキではメインストリームとして、スポーツツアラーのZZRシリーズを根幹とする時代を迎え、日本の3メーカーとは異なる製品開発を貫いていた。
もちろんレプリカファンに向けたZXRをはじめ、ローソンレプリカのようなアップハンドルネイキッドスポーツも、カワサキのパフォーマンスイメージを支える大事な要素ではある。
しかしZZRシリーズは、カワサキにしかない価値観を象徴する存在感の宿う看板モデルだったのだ。



