ゼファーの独り舞台にカワサキ自らが反骨発想!
1989年、カワサキがリリースしたZEPHYR(ゼファー)は、レーサーレプリカ熱に辟易とした空気が漂いはじめたタイミングもあって、瞬く間に400ccクラスの販売トップを奪う大当たりとなった。
ゼファーの爆発的な人気に、各メーカーからも伝統的なパイプフレームの車体にパフォーマンスを込めたコンセプトや、性能よりお洒落なデザインでビンテージではないコンセプトなど、様々な新機種が投入されたもののゼファーの独り勝ち状態は揺るがなかった。
この状況をぶち壊そうとしたんは何とカワサキ。
世界でザッパーのキャッチコピーを軸に「じゃじゃ馬」的なイメージで押しまくったカワサキとして、トラディショナルなネイキッドばかり人気というのも違和感があったからだ。
そこで街中の交差点で信号が変わる瞬間、スタートダッシュで前輪が宙へ浮いたままのウィリー状態で吹っ飛んで行く、そんな激しさを連装させるネイキッドスポーツを開発しようということに。
XANTHUS(ザンザス)は1992年のリリース。エンジンはレプリカのZXR400をベースに、57mm×39mmの398ccで53ps/11,500rpmと3.7kgm/9,500rpmとスペック表示されたが、バルブまわりから吸排気すべてを思いきり中速域を最優先する特性へとチューン。
右側2本出しのサイレンサーはまるで2スト・レプリカのスパルタンな雰囲気を漂わせ、アルミのフレームもレプリカのツインチューブではなく、真ん中を貫くようにエンジンを囲むペリメーター・デザインとこれまで見たことのないフォルムだ。
時代は猛牛を好まなかった!
追い越し加速でゼファー750やNinja900で勝るダッシュ力を求め、3,000rpm以下では2スト250より緩慢で、ココを上回ると急に目覚めたようなスタートダッシュへ豹変、8,000rpmまで一気に吹け上がり前輪が高々と宙に浮く!そんなシチュエーションを掲げ開発されたZANTHUS(ザンザス)。
タコメーターのレッドゾーンが、14,000rpm以上といかにも過激な仕様は、実際に2速でもピークの高回転域ではウィリー可能とじゃじゃ馬ぶりを発揮。
目標だった4ストローク版マッハIIIの意図は見事にかなえられていた。
雑誌広告のキャッチコピーも「Road Bull」、公道の猛牛を謳い強烈さをアピールしていたが、このスパルタンで過激なパフォーマンスに日本のライダーは見向きもしなかった……。
レプリカのエスカレートし過ぎたパフォーマンスに辟易としていただけに、ゼファー(400)のようなオートバイの原点回帰へ心が動いていた時代、当のカワサキでさえ崩せなかったトラディショナル流行りのムーブメントは、そこまで揺るぎのないものだった。