キャリアは浅いけどビッグネイキッドを
アクティブに操りたいライダーへお奨め！
ビッグネイキッドのライダーというと、スーパースポーツの前傾で緊張感を伴うライディングではなく、街乗りからツーリングに幅広く使いたい、でも大型バイクならではの力強さと存在感は楽しみたい、そんな思いで乗る層が多い。
KTM 890 DUKE Rは、そういう意味だとかなり異質な存在と言わなければならない。
まず車重が166kgと400ccクラスより軽い。200kg以上で扱いに慣れは必要だが、その重さが安定感となる国産ネイキッドのドッシリ落ち着いた走りとは全く別世界だからだ。
この軽さはビッグバイクに不慣れなキャリアの浅いライダーや女性に年配ライダーに、乗るのを億劫に思わせない身近な存在となってくれる筈。
しかもシート高が一見高そうだが、乗車時の!G’だとかなり沈むので、小柄なライダーにも足つきは悪くない。安心のため車載工具でプリロードを下げるのも容易い。
そしてエンジン特性が、どのモードを選ぼうがスロットル操作に気遣う必要がないほど、ライダーを脅かす唐突なレスポンスが皆無だ。
これはキャリアの浅いライダーを、バイクへ瞬く間に馴染ませる。そしてラフに開ける気にさせて、結果としてアクティブな走りへ誘うという効果に結びついている。
さらに的確なアライメントと、豪華なブレーキを含む足回りの装備で、コーナーを安心で醍醐味のある、たとえば深くバンクしなくてもクイックに曲がれる、大人が楽しむのに良い按配の、効率が良いスポーツラディングを可能にしているのだ。
他にない独得なエンジン・フィーリングと、
電子制御の最先端進化で警戒心不要の解放感に浸る
KTM 890 DUKE のパラレル（並列）ツインは、ライバルに多い90°Vツインと同じ爆発間隔の270°位相クランクと違って、KTM頂点モデル1290の75°Ｖツインと同じ爆発間隔とした75°（435°の爆発間隔）位相クランクが最大の特徴。
巧妙なバランサー設定で、パルスに角がなくラフな伝わり方をしないので忘れがちだが、わかりやすくいうとビッグシングルによく似た鼓動感で路面を蹴る。
この明確な脈動（パルス）を刻むトラクションと、他と一線を画した柔和なレスポンスで扱いやすく、広範囲に力強いトルクが呼び出せる特性と相まって、キャリアが浅いライダーでも徐々にスロットルを積極的に開ける乗り方になる。
独得なレスポンスを支えているのはいうまでもなく最新の電子制御。早くから電子制御の研究に取り組んできたKTMらしく、6軸センサーをはじめ多様な要素を処理できる対応力で、すべてに柔らかいイメージでいっさいの警戒心から解き放たれるため、多くのライダーに躍動感を味わう余裕を与えるに違いない。
こうしたキャラクターは良く動くサスペンションとのパッケージで成り立っていて、タウンスピードから高速コーナーまで、同じフィーリングでトラクションがレスポンスする、キャリアの長いライダーには不思議としか思えない安定感だ。
大きなタップリとしたストロークは、乗っている側にはそれと気づかせない穏やかな動作だが、常に的確なバランスポイントへ集約される挙動で、設定の絶妙さに舌を巻いた。
もちろん、だからといって路面を蹴るレスポンスが鈍かったりすることはなく、やんわりと踏ん張りはじめ直後からグーンとわかりやすい力強さが伝わってくる。
こうしたライダーへの感性に馴染みやすさこそ、最新の進化した電子制御ならではで、高性能イコール刺激的、つまりパワフルでアグレッシブといった図式に慣れたキャリアには戸惑いを生じるかも知れない。
しかし、リスクを抑えモーターサイクルのスポーティな醍醐味を楽しんで欲しい、そのための電子制御化を推し進めるKTMのフィロソフィこそ、いまメーカーが取り組むべき最優先課題のひとつだろう。
誰にでも楽しめる高性能……890 DUKE R の魅力はまさにそこにある。
