大型ツアラーの水冷4バルブ4気筒を、まさかの空冷2バルブ燃焼室とほぼ再設計の力作!

1991年に東京モーターショーで展示され、翌1992年から発売されたゼファー1100は、アメリカ向け大型ツアラーのボイジャー1200に搭載されていた水冷4気筒エンジンがベース。
これをシリンダーから上をわざわざ空冷仕様に設計し直すという、特異な素性のパワーユニットが搭載されていた。
この超弩級ツアラーは4気筒で78.0×62.6mmの1,196cc。
ゼファー1100は空冷化するのに、このボイジャー4気筒のボアを78.0→73.5mmへと縮めることで、冷却風が抜けるのに好都合だったシリンダーピッチ(間隔)に目をつけたのも候補を決めるポイントだった。




またDOHCながら敢えて2バルブとしたのは、半球形燃焼室と組み合わせたかったからだ。
4バルブ化するとペントルーフ型の燃焼室となり、高回転時の燃焼効率は良いものの低回転域では空冷だと燃焼室の縁の部分で異常燃焼(ノッキング)が起きやすいデメリットを生じる。
ゼファー1100はトラディショナルなビッグバイクの良さとして、低回転域の逞しいトルクを楽しませるエンジンでなくてはならない。
ということで、半球形燃焼室と吸気φ39mmに排気φ34mmが向き合うビッグバルブが組み込まれ、大きなボアでも火炎伝搬にどんな回転域でも良好な燃焼とするため気筒あたり2本の点火プラグを採用しているのだ。
またクランクシャフトも、大型ツアラーの巡航が主体で使われるのと違い、空冷エンジンを楽しむ乗り方を想定してクランクマス(慣性)を減じたスムーズな吹け上がりを意図した完全な新設計、流用できたのはクランクケースくらいだった。
またクランク軸下には1軸2次バランサーが駆動され、不快な振動の出る回転域をほぼ打ち消している。


車体まわりはこのビッグトルクを発生する巨体エンジンを抱え込むのに、フレームはφ38.1mmのメインチューブがスイングアーム・ピボットの部分までを結び、ピボット部分を覆うアルミプレートも強度部材とするなど万全を期し、アルミの80×35mmのスイングアームは、内部にリブを内蔵した日の字断面で後輪アクスルをエキセントリックホルダーで締め上げる高剛性仕様としている。
などなど、650系ザッパーをベースとして開発されたゼファー750とは、各要素へ込めたテクノロジーがまるで異なる、いかにもビッグバイクならではの集合体としていた。


輸出モデルでもあるゼファー1100は、国内向けでもパワーダウンをしていない1,062ccで93PS/8,000rpm、9.1kgm/7,000rpm。
新たに設計した一体型の鍛造クランクシャフトもあって、僅か1,500rpmからでもグイグイと加速し、3,000rpmを超えると俄然逞しくなり、5,000rpmあたりから増大せず一定に感じさせるという、徹底した中低速重視のチューンとしてある。
ハンドリングも小さなターンでも前輪が切れ込まないよう神経質な部分を消した設定で、いかにも乗りやすいと評判が広まり、好調なスタートを切った。
初年度の販売予定台数は、国内向け3,500台、アメリカが1,000台、そしてヨーロッパ向けで3,500台と、ワールドワイドにニーズを想定していたのだ。

そして2006年の最終モデルまで、スポーク仕様のRSを加えたりしながら、カワサキではあのZ1以来定番のトラディショナルなカラーリングが展開されていった。
当然ファイヤーボールとイエローボールの、伝統的かつ情熱的なトラディショナル・カラーリングも存在した。



あの定評だった前輪がややアンダー気味に、絶大なる安定感の旋回で万人が心置きなく愉しめる堂々のビッグバイクの乗り味……排気ガス規制で大幅にパワーダウンしても良いから、空冷で甦るという多くのファンが抱く夢は叶わないのだろうか?



