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このバイクに注目
SUZUKI
TL1000S
1997~2000model

TL1000Sは初のVツインでコンパクト化を狙い新しいセミカムギヤとロータリーダンパーを開発!【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

リスクがあっても新しいチャレンジ!を合言葉に初めてのメカニズムでも臆することなく採用!

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スズキは1997年、初のVツイン・スーパースポーツのTL1000S(VT51A)をリリース。 その初のVツインは、90°の挟み角だとエンジンの全長が長くなりがちで、ビッグバイクでは大事な前輪荷重も稼ぎにくいのを解消しようと、DOHCの2本のカムシャフトをギヤ駆動にしてカムまわりの膨らみを小さくする新しいメカニズムを採用していた。
車体のほうも、Vツインの排気系レイアウトだとリヤサスのスペースが厳しいため、ロータリーダンパーで対応するなどチャレンジの多い仕様。
これらは翌1998年にデビューしたスーパーバイク・レースのホモロゲーションを前提に開発したTL1000R(VT52A)のベースモデルだったからで、ツーリングなど多用途を前提にしたコンセプトには過剰なほど斬新さが目を引いていた。

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90°Vツインはボア×ストロークが98×66mmの995ccで、125ps/8,500rpm(国内仕様は93ps/8,500rpm)、最大トルクが107.4Nm/7,100rpm(国内仕様は8.8kgm/7,000rpm)のスペック表示だった、前バンクの排気側カムをチェーンやベルトで駆動すると、膨らみが前輪と干渉するため通常のチェーンで駆動するギヤを介するという凝った構成。
またアルミ製ダイアモンド・フレームも、リヤサスはリンクを介して右側メインチューブ横に細く巻いたスプリングだけ置き、ダンパーは筒型の往復作動ではなく回転式のロータリーダンパーという独自のメカニズムで、ホイールベースを1,415mmとミドルクラス並みにコンパクトとすることに成功している。
そして多くの関心を集めたのがその車重。乾燥で187kgは!,000ccクラスだと群を抜く軽さだ。

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日本メーカーのように大量生産を前提にすると、チャレンジし過ぎて開発に手間取ったり失敗するリスクを考えれば無難なレベルで開発しがちだ。
しかしスズキは4ストローク化のGS750以来、2ストのRG250Γをはじめとして他が手をつけていない新しい素材やメカニズムに、臆することなく挑戦するのを社是としていた。
そうした背景がなくては、これほどチャレンジが多様な開発は許可を得るのが常識的に難しい。

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実際TL1000Sは、フューエルインジェクションのノウハウがまだ浅く、初期のロットではアイドリングが不安定だったりしたが、怯まずにそこからの積み重ねでいまや日本メーカーで最もVツインエンジンでのキャリアを誇るまでになっている。
そしてSV650をはじめ、ツーリングのカテゴリーで名車として評価が高いのはご存じの通り。
最新の現役モデルでもVツインは健在だ。

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このTL1000Sをベースに、スーパーバイクでのホモロゲーションを狙った、TL1000Rが1998年にデビュー。
さらにシリーズとしては、ツーリング仕様を意識したSV1000SとネイキッドのSV1000も2003年から加わり、2006年にはSV1000SZが評価を高めていた。
SV650系と共に目立たないながら扱いやすいスポーツとしてファンを獲得する、いかにもスズキらしい存在となっていった。

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