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このバイクに注目
Royal Enfield
HIMALAYAN

【ロイヤルエンフィールド ヒマラヤ 宮城光が試乗インプレ】作り込まれたフレンドリーな冒険バイク

Photos:
真弓悟史
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ロイヤルエンフィールドの最新アドベンチャーモデルはシンプルながら機能美が際立つ。インドからヒマラヤを登るバイク、そんな雰囲気が全身から漂う

昨今のアドベンチャーバイクには電子制御デバイスが奢られ、車体は大型化傾向があるがロイヤルエンフィールドの「ヒマラヤ」は、411cc空冷単気筒エンジンを搭載し、過剰な装備を省いた軽量かつシンプルなつくりが魅力。気軽に走り出すことができるヒマラヤでの冒険ライディングは、いつだってライダーが主役だ

乗り手の五感を研ぎ澄ますシンプルな冒険バイク

便利な時代だ。何をするにも、リアルでなくバーチャルで済ませる。そんな時間の使い方や、生き方も現代だからこそだ。
子供の頃、冒険に憧れた。今回走らせたヒマラヤのエンジン鼓動を感じた時、ふと幼い頃に見た映画を思い出した。小さな子供と愛犬、パイロットが乗り込んだ小型飛行機が広大なカラハリ砂漠に不時着し、生き残った主人公の少年と愛犬がブッシュマン原住民に助けられるまでの出来事を描いた作品だ。決して冒険ではなく、命からがら過ごす瞬間が、当時主人公と同じ年齢だった僕には衝撃的な映画として心の何処かに残っていた。究極の場で生きのびるために与えられている五感、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚に加えて経験値からくる研ぎすまされた第六感が必要だ。つまり、全神経を集中し、ことに対応しなければならない。

ヒマラヤは正に五感を研ぎすますにふさわしいバイクだ。

シンプルな411㏄空冷単気筒SOHCエンジンは、ボア×ストローク78×86㎜であり、ロングストロークらしく低速から粘りをみせてくれる、何処か懐かしいエンジンフィーリングだ。パワフルではないが、人の感性に寄り添う優しさがある。大袈裟なエンジン制御デバイス等は皆無。だからこそ、乗り手の感性がエンジンとの対話を可能にしてくれる。

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一本道をどこまでも走って行きたくなる。シッティングも良いがスタンディングであえてバイクに入力して対話を楽しみたくなる。悪路走破性の高さに、思わず笑顔に

一本道をどこまでも走っていきたくなる!

都心から西へ2時間、御殿場には静かな時間が流れていた。ダートや草の上をゆっくりと走らせてみる。大型アドベンチャーモデルと比べると、一回りどころか二回りほどコンパクトに感じる。身体に触れる部分は、単気筒エンジン搭載車ならではのスリムさが際立つ。もちろん、排気量=出力値も高くはないので、不必要に車格を大きく見せるのではなく、相応に仕上げているところにも好感が持てる。

車体はフロント21インチ、リヤ17インチの組み合わせによって、安定性と軽さを上手く演出している。ワインディング等では、いたずらに軽快感ばかりを狙ったバイクとは違い、しっとりとした手応えをフロントエンドに持たせている。一方、リヤエンドには軽快さが与えられており、フロントのセルフステアが遅れることなくロール方向へ一体感が高まるフィーリングだ。

前後サスペンションは見かけよりは腰のあるセットで、舗装路でも不整地でも走破性に不満はない。ヒマラヤは激しいジャンプやガレ場、ウッディな場所を攻め込むようなバイクではない。アドべンチャーモデルとして、多くのシチュエーションに対応した車体であることが分かる。
タンクサイドからバンパーとも言える形状で取り付けられたヒマラヤ独自のステーには、そのままヘッドライトとダッシュボードディスプレイがマウントされているので、ハンドル周りは極めて軽く動いてくれる。

フロントのダブルフェンダーや、不整地での必需品アンダーガードにタフネス対策のエンジンオイルクーラー。足着き性を考慮した800㎜のシート高に頑丈なリヤキャリア等、アドベンチャーモデルとしては必要最小限の装備ながらも、実は人の能力が活かせる装備が選ばれている。
オーナーの感性をもっとも引き出しながらマシンと対話を楽しむ。そして、人がもっとも楽しむことができるのであれば、それは至福の一時になるだろう。
「モノからコトへ」時代が変化しているいま、ヒマラヤのようなシンプルなマシンでしかできないことへのチャレンジがしたくなった。
子供の頃見た冒険映画のようなことはできないけれど、大人になったいまだからこそできることをヒマラヤなら見つけられそうだ。

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排気量411ccの空冷単気筒エンジンは、バランサー等も採用するなど不快な振動を防いでいる。2,000rpm以下の領域では味わい深い単気筒感も楽しめる。大型自動二輪免許が必要になるが、他にはないパッケージだけにその価値は十分にある

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タイヤはピレリのデュアルパーパスタイヤ。ブレーキはバイブレ製で制動力は十分。ダブルフェンダーは乗り手に優しい装備

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セミデジタルダッシュボードには冒険者の必需品、コンパスが装備される

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ステンレスサイレンサーは消音効果も高いが、シングルらしい脈動感のエキゾーストノートを響かせる

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独自の形状が与えられたメーター&ヘッドライトステーはバンパー的な役割を果たす。フロントフォークでなく車体にマウントされるためステアする感覚は見た目よりも軽い

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燃料タンク容量は15リットル。独特の形状だが、ホールド感は高い。Royal Enfieldのロゴの入ったバンパーも独特

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インドで育まれた独特のスタイリング。オプションのバンパーやケースなどでさらに無骨なスタイルをつくっていくのも面白い

SPEC

Specifications
Royal Enfield HIMALAYAN
エンジン
空冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
総排気量
411cc
ボア×ストローク
78×86mm
圧縮比
9.5対1
最高出力
24.3bhp/6,500rpm
最大トルク
32Nm/4,000-4,500rpm
変速機
5速
フレーム
セミダブルクレードル
車両重量
199kg
サスペンション
F=テレスコピックφ41mm正立
R=スイングアーム+2本ショック
ブレーキ
F=φ300mm R=φ240mm
タイヤサイズ
F=90/90-21 R=120/90-17
全長/全幅/全高
2,190/840/1,360mm
軸間距離
1,465mm
シート高
800mm
燃料タンク容量
15L
価格
62万5,000円
協力/ ロイヤルエンフィールド東京ショールーム

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