ロイヤルエンフィールドのトラディショナルツイン「INT650」から派生したカフェレーサーが「コンチネンタルGT650」だ。手が加えられた部分はハンドルやステップ、シートといった王道にして定番パーツだけではない。実はそのキャラクターに合わせてエンジン特性も変更されるなど、きめ細やかなカスタムが施されていた。
2021年3月、東京都杉並区にショールームをオープンし、その知名度とシェアを着々と広げているブランドがロイヤルエンフィールドだ。ラインナップの主力を担っているのが648ccの並列2気筒エンジンを搭載したモデルで、2018年に「INT650」を発表。同時に送り出された兄弟モデルが、今回紹介する「コンチネンタルGT650」(以下、GT650)である。

クリップオンハンドルとバックステップを組み合わせたカフェレーサーの王道スタイルを再現。ロイヤルエンフィールドの出自がイギリスにあることがよく分かる。価格は79万5,000円(スタンダード)、81万円(カスタム)、83万9,000円(スペシャル)の3グレードで、それぞれの違いはカラーリングのみ。スペックやパーツに変更はない
アップハンドルを備えるINT650は、トラディショナルなネイキッドバイクとして仕立てられているが、GT650のたたずまいはグッとスポーティだ。ハンドルはバータイプからクリップオンタイプに変更され、トップブリッジ下にマウント。グリップ部分はかま首をもたげるように上方にオフセットされているものの、INT650と比較すると歴然と低く、幅も実測で50mmほど絞られている。
必然的に上体は前傾姿勢になるわけだが、他のパーツがそのままだと下半身の収まりが悪い。それを最適化するため、シートとステップは専用のものに換装されているところがポイントだ。

ハンドルはトップブリッジ下にマウントされているが、バーとグリップそのものは上方にオフセットされているため、前傾姿勢は見た目より緩やか。スイッチ類は右にキルスイッチとセルスターター、左にヘッドライトのハイー/ロー、ウインカー、ホーンを備えるオーソドックスなものだ。ハンドル幅は実測で715mm(バーエンド含まず)
自然な前傾姿勢を実現
まずシートは、INT650の座面がほぼフラットだったのに対し、GT650のそれにはライダーとパッセンジャーの間に段差が設けられている。これによってシングルシート風のデザインが与えられた他、INT650よりも9mm低い、793mmのシート高を実現。この数値はそのまま足つき性のよさとして体感することができる。
そして、操作の要になるステップはINT650比で100mm以上後退した、いわゆるバックステップになっている。かなり大きな、言い換えると身体に負荷がかかりそうな位置変更に思えるが、案外そんなこともない。
たとえば背筋を伸ばした状態でイスに座り、そこから上体を徐々に前傾させてみれば分かる。上体の角度が深くなるにつれ、ひざ下や足先には後方へ投げ出すような力が働くはずだ。つまり、ハンドルが低くなれば、そのぶんステップは後退するのが自然な身体の動きであり、その意味でGT650のライディングポジションは、これ以上でも以下でもないところで成立している。決して見た目優先でカスタマイズされたわけではない。

シート高はINT650よりも低い793mm。表皮の処理はライダー側とパッセンジャー側で異なり、シングルシート風のデザインになっている。大型のグラブバーを標準装備
見えない部分も専用チューン
この他に、INT650と大きく異なるのが燃料タンクの形状だ。滑らかなティアドロップ型タンクからスクエア型のロングタンクに変更され、容量は13.7Lから12.5Lへ減少しているものの、そのぶん軽量化に貢献。カフェレーサーとしての資質が引き上げられている。
ハリスパフォーマンスが手掛けたスチールのダブルクレードルフレーム、φ41mmの正立フォーク、リザーバータンク付のツインショックなど、ハンドリングを司る主要コンポーネントはINT650と共通だ。バイブレのブレーキキャリパー、エキセルのアルミリム、ピレリのバイアスタイヤ・ファントムスポーツコンプといった装備に関しても同様で、あらためて整理しておくと、両モデルの間にある外観上の差異は、ハンドル/シート/ステップ/燃料タンクの4点である。

ニーグリップ部分が大きく絞られたスクエアタイプの燃料タンク。全長はINT650よりもわずかに長く、カフェレーサーらしいスタイルに貢献している。容量は12.5L
カタログスペックを見ていくと、エンジンの仕様は共通に見える。排気量はもちろん、最高出力も最大トルクもそれぞれの発生回転数もまったく同じだからだ。
ところが、同じ環境下でふたつのモデルを乗り比べると微妙に出力特性が異なるのだ。果たして個体差でこんなことがあるのか? といぶかしんでいたのだが、後に関係者に確認して納得。実はモデルのキャラクターに合わせ、異なるマッピングが採用されたのだという。
シリンダーがやや前傾して搭載されているエンジンは、648ccの空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒。クランクは270度の位相角を持ち、リズミカルなサウンドと心地いいトラクションを両立している
では一体どんな風に違うのか? 次回はそのインプレッションをお届けしよう。

SPEC
- Specifications
 - Royal Enfield Continental GT650 (INT650)
 - エンジン
 - 空冷4ストロークSOHC4バルブ並列2気筒
 - 総排気量
 - 648cc
 - ボア×ストローク
 - 78×67.8mm
 - 圧縮比
 - 9.5対1
 - 最高出力
 - 47bhp/7,150rpm
 - 最大トルク
 - 52Nm/5,250rpm
 - 変速機
 - 6速
 - 車両重量
 - 198(202)kg
 - サスペンション
 - F=テレスコピックφ41mm正立
R=スイングアーム+2本ショック - ブレーキ
 - F=φ320mmダブル R=φ240mm
 - タイヤサイズ
 - F=100/90-18 R=130/70-18
 - 全長/全幅/全高
 - 2,122/744(789)/1,024(1,165)mm
 - 軸間距離
 - 1,398mm
 - シート高
 - 793(804)mm
 - 燃料タンク容量
 - 12.5(13.7)L
 - 価格
 - 79万5,000円~(77万6,000円~)
 



