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このバイクに注目
SUZUKI
FALCORUSTYCO
1985 TokyoMotorShow model

スズキFALCORUSTYCOはデザイン習作でなくエンジニアが開発していた!【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

ショー展示の未来バイクに見えたが、実は具体的に開発途上にあった!

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1985年の第26回東京モーターショーで、スズキのブースに真っ白な「未来バイク」が展示されていた。
あまりに未来的なルックスのため、いわゆるショーモデル……企業イメージをアピールするためリアリティの薄い「夢のバイク」が展示されているのだろうと思うファンもいたはず。
しかしジャーナリストへの取材対応で、この超先鋭的なフォルムは、20代~30代の若きエンジニアたちが実際に開発していた試作車で、エンジンは既にベンチで試運転が開始され、シャシーも駆動方式など一部まだ開発途上で従来の方式だったが、とにかく走り出していたと驚くべき事実を知らされたのだった。

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当時のスズキは新しいチャレンジに積極的で、このプロジェクトも2年ほど前に1985年時点で10年先を見据えたバイクがテーマ。気心の合うエンジニアやデザイナー7人でGO!を得て取り組んでいたという。
その特徴ある構成は、まず前輪がハブセンターステア。但し前輪の舵取りを、ロッドなどリンクを介した遠隔操作とせず、油圧のパワーステアリングを採り入れようとしていた。
フロントのスイングアームまわりに何本ものメッシュホースが取り回されているのはこのため。
写真の角度から見えにくいが、後輪の駆動もチェーンやシャフトではなく油圧制御で加減速とも理想的な特性とするのが目標だった由。
エンジンを強度メンバーの中心に据え、前後にスイングアームが伸びたフレームレス構造だ。

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そして目を見張るのがそのエンジン。4スト250ccでDOHC並列前傾ツインを、何と前後で連結したスクエア4としていたのだ。
2ストGPマシンでは2気筒を前後(上下)で連結した実績はあるが、4ストのスポーツモデルでは海外に僅かな例しかない希有なレイアウト。
500ccを想定して得意の油冷で設計され、もちろんエンジン幅は250ccツイン並みと超スリム。
さらに驚いたのが前後のDOHCは、お互いの吸気カムシャフトを共有するトリプルカムシャフト、カム軸が3本しかないのだ。
排気が前後に出ていて、吸気はセンターから前後の気筒へ振り分けられる電子制御燃料噴射。吸気通路を2バルブに絞るか4バルブ仕様へ開放するかで、力強い中速域が得られ最初のベンチでクラス最強のポテンシャルを示した可能性の高いエンジンとのこと。

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またハンドルは左右とも前後スライドで、従来の回転動作ではない。そのハンドルに備わるボタンで、加速からブレーキにギヤシフトなど、全て電子制御という設定。
想像しただけでも操れるまで、かなりの練習が必要そうなまさに未来バイクだ。
因みに車名のファルコラスティコは、FALCO-RUSTICOLUSという学術名のシロハヤブサから由来している。後の名車「隼」の前兆がここにあったとは……。

さらに2輪駆動へとチャレンジは前進していった!

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1985年の東京モーターショーの後、このプロジェクトは歩みを止めていなかった。
続く1987年には、ご覧の「NUDA」を発表、その特許出願で示された図案のように、前輪も駆動する2輪駆動を採り入れ、フレームはカーボンファイバーでシートが車体を傾けるとき、ライダーがズレるのではなくシート自体がスイングする画期的な取り組みも込められていた。
エンジンがGSX-R750ベースで一般的になったが、デザインのまとまりもグッと洗練され、より未来指向の強い感性を漂わせている。

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このNUDAも当然ながら試走まで漕ぎ着けたようだが、解決すべき未踏の要素が多く、そこからの具体化は一時お預け状態となっている。
こうした「未来バイク」、実は意外なほど実際に開発されノウハウを積み上げていると聞くと、何とも楽しみになってくる。
機会があれば、我々にこうした「夢」をみせて欲しいとファンならば誰もが思うはず。期待したい!

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