スズキ独自の油冷をネイキッドで見せる!
1985年に登場したスズキGSX-R750は、フルカウルの思い切ったレーシーなルックスと、アルミフレームの超軽量マシンとして世界中から注目を浴びた。
しかし何より重要なエンジンが油冷方式という最大の特徴が、フルカウルに覆われて見えないのがメカ好きなファンには惜しまれることのひとつ。
それが1995年からネイキッドに搭載され、見た目にも魅力としてアピールできるようになった。
この油冷方式、エンジンオイルを大型のオイルクーラーで冷却するだけに思うのが大半だが、実は画期的な凝ったつくりなのだ。
油冷は境界層を吹き飛ばすスズキだけの強制冷却!
スズキのGSX-R750から採用された油冷方式は、潤滑用とは別のオイルポンプで燃焼室の外壁に高圧で大量噴射するというもの。
このため潤滑オイルを5リットル以上(モデルで5.7リットルまで仕様違いが存在)必要とし、燃焼室のあるシリンダーヘッドからクランクケースへ戻す専用のトンネルがある、水冷とは全く異なる構造となっている。
このオイルを高圧で燃焼室の外壁に噴射して冷却するという効果が、いまひとつわかりにくいので他の例で説明すると、たとえば吐く息をそうっと手に吹きかけると暖まるのに対し、勢い良く吹きつけると冷えるという効果の違いがある。この原理を応用しているのだ。
これは皮膚の表面に境界層という表面温度に近い空気層があって、そこを勢い良く吹き飛ばすことで表面温度を奪うという方式。
水冷よりシンプルで軽量化が可能で、エンジンのサイズもコンパクトにできるメリットが大きい。
その油冷を象徴する意味を込め、シリンダーやシリンダーヘッドに刻まれた冷却フィンは、ピッチが5mmと他にはない繊細なつくりとなっている。
その美しさはまさに溜め息モノ。
カウルに収まっていたレーサーレプリカと違って、すべてを見せられるネイキッドに搭載され、魅力を大幅にアップしたのは間違いない。
BANDITやINAZUMAにGSXと仕向地の事情で様々なネーミング
当初はBANDIT(バンディット)のビッグバイクでのシリーズとして、GSF750やGSF1200が国内で販売がスタートした。
レーサーレプリカのGSX-R750/1100は、このコンパクトなエンジン・サイズを活かす、エンジン幅より狭く取り回せるアルミ角断面のダブルクレードルのフレームを採用、他のエンジン幅よりワイドなツインスパー採用のマシンより、軽快でナチュラルなハンドリングを武器にできていた。
ネイキッドでもそのフレームワークは、パイプを絶妙に取り回しエンジン幅より大きくならないスリムな車体を可能にしていた。
そのためハンドリングが好評で、走りにうるさいヨーロッパのマーケットで排気量が下のクラス並みに扱いやすく乗りやすいと評判になったのだ。
日本ではイナズマの車名のシリーズだったが、ヨーロッパではGSX1200として様々なカラーリングを纏い、ネイキッドのジャンルで人気車種として君臨していた。
国内ではイナズマのデザインよりBANDITのほうが好評なため、2000年に各部をリファインして継続モデルとして生産が続行されていた。
さらに2001年にはGSX1400と、油冷で最大の排気量まで拡大され、2009年まで油冷エンジンは存続した。
美しい繊細な冷却フィンの5mmピッチは、いま見ても溜め息モノの魅力を漂わせている。